「自社に合った社員」という大義で自分の好みばかり採用すると組織はバカになる
先日、東京で採用セミナーを行いました。
そこに参加された、ある会社の社員さんが印象に残っています。
まさに、指示ゼロ経営(ホラクラシー経営)を推進する人でした。しかも、社長がそのことを良く認識されている。
一見すると派手さはないが指示ゼロ経営では採用したい人なのです。
社長の好みばかり集めると組織は正しい判断ができなくなる
採用の際に気をつけたいことは「自社に合った人間を採用する」という考え方です。
思いに共感してくれることは大切ですが、社長の好みで採用を決めると同じような人間の集まりになってしまいます。
しかも「私には人を見る目がある」と自負している場合が一番、危ういと思う。
人は誰だって自分の意見に賛同してくれるヤツが好きです。みんなそう。僕もそう。
でも、集団が賢くなるためには多様な意見、考え方を持った人が必要です。
例えば、NASAがそうだったと言います。
NASAはアポロ計画の時代には色んな経験を持った人が集いました。ところがスペースシャトルの時代には大方同じようなコースを通ってきた人ばかりの集団になったそうです。
いわば「常識人」の集団です。
コロンビア号の事故調査委員会によると、事前に、乗組員の生存率が高まる方法があったにも関わらず、それが黙殺されたと言います。
なぜ黙殺されたのか?…それは反論する者がいなかったからです。
集団内に異を唱える人がいないと集団はバカになるのです。
異を唱える人の特徴は「人の話をよく聞く」思慮深い人です。
決してひねくれ者ばかりではありません。
彼らは熟考するので意見を出すのに時間がかかります。集団が(間違った方向に)進もうと勢いづいた時に、水を指すように反論を唱えます。
だから、ともすれば「空気が読めないヤツ」というレッテルを貼られてしまいます。
そういう人材を潰したら集団はバカへの道にまっしぐらです。
だから指示ゼロ経営では思慮深い人…例えそれが社長の好みではなくても、採用すべき人材だと考えるのです。
バラエティーに富んだ人材で構成される集団が賢くなる
さて、採用セミナーに参加した、その方はまさにそんな逸材でした。
僕が最初に驚いたのは、セミナー中に挑戦してもらう「ある課題」でした。
その課題とは、こんなもの。
ある日、あなた(上司)がデスクで仕事をしていると部下がやってきました。上司:「どうしたの?」部下:「実は、今進めているプロジェクトで悩んでいることがありまして…」
この時、指示ゼロ経営的な対応はどんなものか?…これを考えるのが課題です。
通常、「部下の話を良く聴き、自分で答えを出せるように適切な問いを投げかける」と答えます。勉強している人、特にコーチングに詳しい方がこう答えます。
別に悪い対応ではありません、というか優秀な上司だと思います。
その方の考えはこうでした。
「仲間に相談してもらう」「巻き込む」
これ、何を意図しているか分かりますか?
相談に来た個別の案件の解決ではなく、そのずっと先のことを考えてのアイデアです。
つまり、上司が答えを出すわけでもなく、出す手助けをするわけでもなく「学習する集団」を育成するという考えなのです。
よほど考えた人でないと出ないアイデアだと思います。
セミナーでは各種ワークに取り組んでもらいますが、どのワークも熟考していました。
傍から見るとずいぶんと悩んでいるように見えますが、その通りで悩んでいるのです。
しかし、それは「できなくて」悩んでいるのではなく、「より良い解決を出すために」考えている姿なのです。
僕には1つ、反省があります。熟考している彼が困っていると思い、思わず声をかけてしまったのです。
彼からすると思考の邪魔です。でも、こういうケースは職場でも多いと思います…
懇親会で彼の上司(株式会社ワークウェアの中山猛社長)が僕に言いました。
「彼、良いでしょ?」
社員さんも素晴らしければ社長も凄いと思いました。
彼のような本当に優れた人材はテキトーな面接、採用試験では見抜くことは難しいと思います。
また、もう1人の社員さん(中山社長の弟さん)は困難を突破するエネルギーを持った方でした。
違うタイプです。
そして2人とも中山社長とは違うタイプです。
集団の中で鎮座する「長老型」だと感じました。
このようにバラエティーに富んだ人材で構成される集団が賢くなるのだと実感したのです。
そんな採用活動をするためにも、採用は社長の独断で決めないことだと考えます。
採用活動にも「多様な知恵」で!
とても大切なことだと思います。
それでは今日も素敵な1日をお過ごしください!
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