正解を探さない。顧客におもねらない…不良企業が未来を拓く
先日、「未来のビジネスはこう変わる」という趣旨の記事を書いたところ、大きな反響がありましたので、今日はその続編を書きたいと思います。
ざっとおさらいをしますね。
これからはビジネスの役割が大きく変わります。
人類がずっと課題としてきたのは「物質的な生活向上」でしたが、それは産業革命以降、飛躍的に満たされました。
縦軸に「開発コスト」横軸に「市場規模」を置いてあります。 緑色の●は「マス」であり「開発コストが安い」領域で、当然ながら企業はまず最初にここに飛びつきます。 しかし、この市場はすぐに飽和し、寡占化が進み真っ赤のレッドオーシャンになります。最終的に、自動車メーカーではトヨタ一強になっているように、やがて勝者総取りとなるでしょう。
その後、大企業は「マスを相手にしたい&資金力がある」ので上の領域に移動する可能性があります。 対し、中小企業は「ニッチを相手にできる&資金力がない」ので左に移動するという二極化が進むという話です。
↓念のため、記事を読みください。
https://www.shijizero.jp/archives/n21867
今日の記事では、特に、中小企業が影響を受けるポイントに絞り、図の「右側」と「左側」の違いをもう少し詳しく解説したいと思います。
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❚ 左側は正解を探さずに「つくる」
「右側」は生活者の最大公約数を対象にするので、市場調査により「正解」を探ります。綿密に顧客の声を分析し、製品・サービスの開発の参考にします。
しかし、モノが行き渡った今、状況が一変しました。
正解にたどり着いた結果、電機店に行くと、メーカー名を隠せばどのメーカーか分からない「どれも同じ」製品が並んでおり競争は熾烈です。
また、あなたがお使いのテレビリモコンを見れば分かるように、「どの声にも応える」と頑張った結果、ボタンの数が多すぎてかえって利便性が下がっています。
対し「左側」は文化的、福祉的な商いですので、正解探しは意味を成しません。
正解は探さずに「つくる」ものと考えます。
分かりやすい事例として、下北沢に「本屋B&B」という書店を開業した嶋 浩一郎さんの言葉をお借りします。
嶋さんが以前にラジオ番組に出演され、その中で「良い本屋とはどういう本屋だと思いますか?」という問いを立てていました。
「良い本屋」…あなたなら、どんなイメージを持ちますか?
嶋さんの定義はこう。
「買う予定がまったくなかった本を買ってしまう本屋」
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みんなが求める本(正解)を並べるのではなく、自分が勧めた本を「正解」にしてしまうということです。
まさに「左側」の商いですね。
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❚ 「右側」は顧客におもねる。「左側」は顧客を育てる。
「右側」の商いでは、顧客は正解を示してくれる重要な存在ですので、自然と「顧客におもねる」というスタンスになりがちです。だから「お客様は神様」という言葉を誤解して受け取る人が多いのだと思います。
最近、カスハラ対策を立てる企業が増えていますが、そういう顧客を育てたのは他ならぬ「右側」の企業です。
対し「左側」の商いでは、顧客は「教育の対象」になります。
我が家の近所の魚屋がまさにそう。
買い物に行くと、「おう、良いところに来た。この季節に長崎で捕れた鯵は脂の乗りが違うぞ。買わないと後悔するから買っとけ」と指導するのです。
良い魚がない日に行くと「ダメダメ。今日は売る魚はない」と追い返されます 笑
お陰で、我が家は魚に関する選択眼と味覚が鍛えられ、食文化がとても豊かになりました。
店主と我が家の関係はまるで「師匠と弟子」のようです。
「顧客は弟子」と書くと、傲慢な印象を持つかもしれませんが、素晴らしい師匠は弟子を思い、誇りと信念、美学に基づいた一貫性のある指導、提案をします。
「右側」の商いは経済的利得(儲け)を最大化することを最重視する傾向があり、そのための手段として製品・サービスを位置づけます。
一方「左側」の商いは、儲けは「結果」であり目的ではありません。件の魚屋さんが魚を仕入れる動機は「お客様(弟子)に教えたい。食べて欲しいから」です。
いかがでしょうか。
このように「右側」と「左側」では経営の原理が違うのです。
今日、紹介した違いの他にも、下図のように様々な違いがあります。
また別の機会に詳しく解説しますね。
さて、前回の記事でも指摘しましたが、これからは右か左、どちらかに思い切って振ることが求められると考えています。
中途半端が一番ダメ。
両者では「ビジョン」「人材育成」「組織づくり」「賃金制度」などがまったく違います。
しかも「左側」は十社十色で、正解はありません。
今、賃上げ圧力が高まっていますが、あれは「右側」の論理でのみ展開されていると考えています。
というわけで、賃上げを切り口に「左側」への移行を考えるイベントを行います。
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指示ゼロ経営説明会『賃上げムードの先にあるのは天国か地獄か?』
4月1日(火)19:30〜21:30 参加費は3,300円です。
↓詳細、お申し込みはこちらから。