ウェルビーイングを基にした業績目標設定と賃金の決め方

あなたの会社は、何を根拠に目標額を決めているでしょうか。
経常利益から逆算し、売上高などの目標を決めている戦略的な企業もあれば、「何となく昨年対比103%」などと適当に決めている企業もあると思います。

決め方は様々ですが、多くの企業が「成長し続ける」ことを前提にしていると思います。

なぜか私たちの意識には「無限の成長」が刷り込まれています。

その背景には資本主義の原理が影響しています。
資本主義は、無限に成長し続けることを宿命的に課せられます。
その理由は、金利と利息にあります。
例えば、あなたがある企業の株を買ったとします。仮に100万円を投資し利回りが5%だとすると1年後には105万円に、5年後には約127万円に、10年後には約162万円にと、雪だるま式に増えていきます。
この仕組みがある以上、企業は業績を伸ばし続けなければならなくなります。

無限の成長は、経済が成長トレンドにある時…つまりモノが十分になかった時代では希望になりましたが、成熟期になると成長率が鈍化し、働く人を苦しめる弊害となります。
現状、世界の経済成長率は60年間にわたり鈍化傾向にあります。1960年代には5.5%だったのが、2010年代には1.1%、2020年代にはさらに下回ることが確実と言われています。

そんな時代に、無限の成長を前提にした経営目標を立てるなど「無理ゲー」というもの。株主以外の誰も幸せになれないのは自明のことです。

だからこそ、百食売ったら閉店してしまう「佰食屋」のような企業が現れ注目を集めるのです。

僕は何も「成長を目指すな」と言いたいわけではありません。
今、経営者が考えなければならないのは「経済数値以外の何を充実させれば、豊かを実感できるか?」を考えることです。数値だけでない、自社独自の豊かさのモノサシを複数、併せ持つことです。

そのためには企業として「豊かな人生とは?」というビジョンを持つことが欠かせません。

「家族や友人と過ごす時間を確保できること」
「家族の生活や教育を守る資金があること」
「趣味を充実させられること」

要件は企業によって違って構いませんが、1つのモノサシではなく、複数の要件を組み合わせた「バランス・スコアカード」が必要です。

明確なビジョンがないと「金はいくらあっても困らない」となり、無限の成長の罠に絡め取られ、その結果、本当に大切なことを大切にできなくなってしまいます。

経営者は、社員の立場に立ってみてください。
働く人の豊かさのビジョンがないのに、会社のビジョンや数値目標だけ押し付けられても、それらを自分事にできるはずがありません。

上場企業では難しいですが、中小企業では、ビジョンや数値目標と、働く人の人生ビジョンをセットで設定することが大切です。

具体的な実務手順は次のようになります。

1、企業ビジョンと、社員の豊かな人生ビジョンを描き、両者を統合する。
2、1と2を実現するための業績目標を決める。
3、収益連動型の賃金制度により、社員に適正に利益を分配し人生ビジョンの実現に繋げる。

最後に、未来工業株式会社(岐阜県)の創業者である、故・山田昭男さんにお会いした時に、山田さんがおっしゃっていた言葉を紹介しますね。
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夜9時や10時まで働いて、家に帰ったらメシ食って風呂入ってバタンQ、なんていうのは家畜の生活だ。早く家に帰って家族と過ごしたり趣味に没頭したほうが良い。それが結果的に創造性を生む。

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同社は、社員の幸福度が高く、特許取得が多いクリエイティブな企業ですが、その創造性を支えているのは豊かなプライベートということです。そのために残業を原則禁止にするなどの方策が取られていました。(12年ほど前の話で、今はどうか知りませんが)
企業ビジョンと豊かな人生ビジョンが見事に統合されていることが分かりますね。

目標設定と賃金制度は、社員のウェルビーイングを基に設計する時代になったということです。


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