ノスタルジーから描くビジョン
ディズニーランドで最も運営が難しいエリアはトゥモローランドという話を聞いたことがあります。
その理由は、人は未来をイメージするのが苦手だからと言います。
対しノスタルジーは大好きですよね。
このことは、企業が起死回生の策として、過去のヒット商品のリバイバルを出すことが多いことを見れば分かります。
人は過去には強いが未来には弱い…これを経営課題に当てはめると、ビジョンを描くのが苦手な経営者が多いことが頷けます。
さらに難しさに輪をかけるのは、ビジョンには「動き」が必要だということです。
ビジョンには、未来の「その日」が動画で再生されるリアリティが必要です。動画で再生されるということは、そこには動くものがある、つまり人の動きが必要ということです。
自社の未来を取り巻く人たち…お客様や社員、社員の家族などが、どんな表情でどんな言葉を口にしているかがありありとイメージできるリアリティが求められます。
よく「地域一番店になる」といったものをビジョンとして掲げる企業がありますが、それはビジョンと言うよりは目標です。
さらに言えば「命令」になっている企業もあります。
また、ビジョンが正解探しになっているケースも見られます。「我が社はどうあるのが正解なのか?」という思考で描いても、人をワクワクさせるものにはなりません。
ビジョンは「こうありたい」という願望で良いのではないでしょうか。
とまあ、ビジョンを描く難しさに触れましたが、ビジョンが描けないなら、私たちが得意なノスタルジーに頼ることも1つの方法だと考えています。
過去を振り返り、「あの瞬間をもう一度つくりたい」と思えるエピソードを挙げ、それを当面のビジョンにする方法です。
僕の経営支援先の事例をご紹介します。
その会社は、東北地方で家具の製造販売を行っている、100年以上の歴史を持つ老舗家具店です。
なかなかビジョンを描けないということで、過去のエピソードを振り返りました。
すると、社長のお母様がこんなエピソードを語ってくれました。
ある日、お店に80代後半の女性が来られ、家具を買いたいとおっしゃいました。しかし…その家具は非常に高価な上、100年以上も使えるもの、その女性が買ったとして、あと何年使えるのだろうか?と思ったそうです。
困惑するお母様の様子を見て女性は言いました。
「私は、この家具が欲しくて今までがんばって働いてお金を貯めてきました。私にとって、その長い時間もこの家具と一緒にいた時間なんです」
このエピソードを聞いた瞬間に、社員さんの心に「こんな風に言われる仕事がしたい」というイメージが立ち現れました。
スタンフォード大学のビジネススクール、ジェニファー・アーカー教授の研究では、事実を羅列するのではなく、ストーリーを交えて伝えた方が22倍記憶に残ることが明らかになっています。
ビジョンに人間が登場すれば、そこにはストーリーが生まれるはずです。
新聞業界のように、ビジネスモデルが賞味期限切れを起こしている場合は、まったく新しい未来を描く必要がありますが、そうでなければ、ノスタルジーからビジョンを描くことも有効です。
過去のエピソードは、社員さん1人1人が持っていると思います。それらを出し合うことで、ビジョンの輪郭が鮮明になると思います。
ビジョンに登場する人が、その先の未来を教えてくれるかもしれません。
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