下積みが大切な理由
こんな話をすると時代遅れと思われるかもしれませんが、新入社員には、入社後しばらくは下積みをさせた方が良いと考えています。
以前に、知り合いの寿司職人が「若い人は下積みが長いと辞めてしまう」と嘆いていたのですが、それは下積みの意味…下積みが大切な理由を理解していないからだと思います。
その職人に理由を聞いても答えは返って来ませんでしたが、言語化できないだけで「絶対に必要」という確信は持っているようでした。
なぜ下積みが必要なのでしょうか。
その理由は「トータル・プロダクト」という概念で説明することができます。
トータル・プロダクトとは、商品・サービスを取り巻く周辺要素「丸ごと」を指します。
例えば、顧客は、寿司だけでなく、店の雰囲気や食器、職人の所作、トークなどを含む全体を買っています。
ヒノキの一枚木のカウンターに立っているのが茶髪の兄ちゃんだったらどうでしょうか。
HIPHOPのBGMに乗って「小肌の握りウェ~イ」なんて出されたら、どんなに寿司が美味しくても興ざめしますよね 笑
トータル・プロダクトを身につける最も有効な方法は「働きながら学ぶ」ことです。
先ほどの寿司職人のお店には弟子が数名働いているのですが、親方のもとで修行するうちに、徐々に寿司職人らしくなっていきます。
「挨拶」「話題づくり」「所作」「作務衣の着方」といったものから、食器のセレクトから飾るお花まで一貫性が通ってくるのです。
また親方は、休日には全国の焼き物の産地を巡ったり、落語を楽しんだりしています。弟子たちは親方のもとで働きながら、そうした教養も身につけていきます。
理屈の話をしますと、下積みは、学習サイエンスの分野では「浸かる」と言います。
文字通り、その世界に浸かることで肌で学んでいく学習法です。例えば、日本人であれば、どんな素人が生け花をやってもだいたい「7:5:3」の非対称の形にすると言いますが、それは日本文化に浸かってきたからです。
カリフォルニア大学の人類学者ジーン・レイヴとエティエンヌ・ウェンガーは、背広の仕立屋での徒弟制度から、新人が職場に入って様々な ことを学んでいく様子を「正統的周辺参加」という言葉で説明しています。
トータル・プロダクトは、要素があまりに複雑、多岐、抽象的なので、体系化することは難しいので、熟達者のもとで下積みを重ねながら吸収するしかないのです。
だからこそ、他社が簡単に真似ができない、参入障壁になると考えることができます。
新人には、下積みが大切な理由を予め伝えることが大切だと思います。
新人が辞めてしまうのは、忍耐力の問題ではなく、意義が分からないことに原因があると思います。
「後ろ姿を見て盗め」では説明不足だと思います。
もしかしたら、僕が知らないだけで、それにも理由があるのでしょうか。
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