経営理念は本当に必要ですか?

そもそも経営理念は本当に必要なのでしょうか。
偉い経営者がみんな「理念が大切だ」というので、無条件にそうだと受け入れてしまいますが、ちゃんと自分の頭で考える必要があると思います。

結論から言えば、僕は「やっぱりYes」だと考えています。
理念がないと、その集団は人間が生きることのできないディストピアになるからです。
「大げさな」と思われるかもしれませんが、人が犠牲になるような経営の背景には、理念の欠如があります。

企業理念は、その企業により様々ですが、ひとことで言えば「お金よりも大切なこと」が謳われています。
この「お金よりも大切なこと」を設定すると、企業組織はまったく違うロジックで駆動します。

どういうことでしょうか。

ビジネスが駆動する原理は、通常「ギブ・アンド・テイク」ですが、この関係性では、本当に大切で幸せなものは手に入りません。
このことはプレゼントで考えると分かります。
プレゼントとは、見返りを求めて与えるものではありません。本質的にギブ・アンド・テイクとは異なるものです。

経済学者の中には「プレゼントは無意味」と考える人がいます。その理由は、相手が喜ぶかどうか分からないリスクを抱えて贈与するなら、最初から現金を渡す方が合理的と考えるからです。

この考えに共感する人はほとんどいないのではないでしょうか。

プレゼントには、その「モノ」の効用以上の「何か」…余剰分が乗るわけで、それがお金で買えないものであり、本当に大切なものです。
大切な人からもらったプレゼントを失くしたら罪悪感を感じますよね。「失くしても同じものを自分で買えばいい」とはなりませんから。

プレゼントをもらった人も、相手に対し、同じように余剰分を乗せた贈り物をします。
そして、重要なことは、「贈るという行為にも幸せが内在する」ことです。

本当に大切なものは「贈与の関係」でしか得られないということなのです。

見返りがなくても贈られる贈与に対し、ギブ・アンド・テイクは必ず見返りを求めます。
顧客に対し「感謝の気持ちがあれば代金は要らない」とはなりませんし、社員に対し「清い心があれば労働はしなくてもいい」とはなりません。

しかし、ギブ・アンド・テイクだけの関係だと、差し出すものがない、あるいは、何かしらの事情で差し出すことができない人=「困っている人」は、その瞬間に「不要な人」になります。

しかし、本来は、困っている人にこそ助けの手が差し伸べられるべきではないでしょうか。

もし、それができるのなら、ギブ・アンド・テイクを超えたロジックが必要になります。

それを体系化したものが理念です。

理念がない組織では、困っている人は即座に不要な人になっています。
そんな人にも賃金は支払われます。差し出すものがないのに受け取っている、しかもそれが贈与ではないとすれば、当人は凄まじいストレスに苛まれることになります。
よく「そんなにストレスを抱えてまで働く必要はない。辞めてしまえばいい」という人がいますが、ギブとテイクのバランスを保たなければ罪悪感に苛まれるので、簡単に退職できないのです。

そんな組織で安心して働けるわけはありませんし、自発性や創造性が発揮されるわけがなく、よって繁栄するはずがありません。

というわけで「経営理念は大切か?」と問われれば「Yes」と考えるのです。
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