2025年こそ「諦めない継続力」を身につける
僕が新年に憂鬱になるのは、これまで、何度も「一年の計」が三日坊主で終わった思い出が蘇るからです。
そんな僕を変えたのは、米国の診療心理学者であるウィリアム・ブリッジズ氏が提唱する「トランジション」(転機)という概念です。
ブリッジズ氏は、失恋や失業、大切な人との死別など、人生の岐路に立つ人を診る中で、転機を「乗り越えられない人」の特徴として、過去にケリをつけていない…「終焉」が済んでいないという要件を明らかにしました。
始める技術ではなく「終わらせる技術」の問題だったということです。
このことは、失恋や失業など、望まざる出来事だけでなく、自らの決意で新しいことに挑戦する場合にも応用できると考えます。
私たちは、目標を「何をどのように始めるか?」という開始の問題として捉えますが、その前に「何を終わらせるか?」…終焉を設定しなければならないということ。
さらに、ブリッジズ氏は、終焉と開始との間には「中立圏」という、モヤモヤした期間が必要ということも指摘しています。
このことは、失恋の経験がある方は深くご理解いただけるのではないでしょうか。失恋の翌日に新しい恋は始められません。失恋を受け入れることができずに苦しみ、自分と向き合う期間が必要なのです。
中立圏から脱すると、新しい挑戦への「開始」のフェーズに入りますが、この時の切り替えを有効に行うマインドセットとして、僕は師匠に「終焉のセレモニー」という方法を教えてもらいました。
事例として、葬儀会社を経営する社長から聞いたエピソードを引きたいと思います。
大震災が起きると、ご遺体が見つからない犠牲者が出ます。ご遺族の中には、ご遺体と対面できないために、気持ちに区切りをつけることができず、ずっと苦しむ人がいます。
同社では、東日本大震災の際、そんな方々のために「せめて位牌だけでも」と無償で提供したところ、多くの人が別れを受け入れることができたと言います。「位牌を受け取る」という行為が、これまでの日常を終わらせる「終焉のセレモニー」の役割を果たしたということです。
セレモニーは立派なものである必要はありませんが、インパクトが必要です。「東山の金さん」は物語の終わりに「これにて一件落着」と言いますが、あのフレーズを聞くと事件が終わったことがマインドセットされ、翌週の視聴に意識を切り替えることができます。
僕は、新しい経営計画書を作る際に、「お疲れ様でした!」の掛け声とともに、以前の計画書を破り捨てるといった儀式をやっていました。
企業で「終焉→中立圏→開始」をスムーズに行うためには、スケジュールに工夫が要ります。
次期の計画を立てる段階と、その計画を実行する直前にセレモニーが必要という、二段構えの構造があるからです。
例えば、新年度が始まる3ヶ月ほど前に「終焉→中立圏→終焉のセレモニー」のプロセスを踏み、心機一転して次期の経営計画の原案を立案します。そして、年度終わりに打ち上げを行い、そこでインパクトあるセレモニーを行い、マインドセットを行い、計画を実行に移すというスケジュールが考えられます。
新しい絵を描くためには、一旦、キャンパスを真っ白にしなければなりません。
何かと新しいことを考えるこの時期。
「何を終わらせますか?」…終焉の問いに向き合ってみてはいかがでしょうか。
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