未来の社会は、ギブアンドテイクから「贈与」へと原理が変わる
明けましておめでとうございます。
今日は、仕事始めということで、今、僕が考えているビジネスの未来像について書きたいと思います。
結論を先に出せば「贈与あふれる社会」が求められ、そうでないと社会は、とても生きづらいディストピアになるということです。
通常、ビジネスは交換…ギブアンドテイクで成り立ちます。双方に差し出すものがあり、その価値を互いに認めた時に交換(取引)が行われます。
交換に値しないと思えば、当然ながら関係は発生しません。
この関係は、売り手と顧客(購買関係)、経営側と労働者(労使関係)など、社会活動における基本原理として私たちを支配しています。
お金を払えない顧客にはものは売りませんし、結果を出せない社員とは雇用関係を継続したくないということになります。
当然のことですよね。
そこには「回収」という目標があります。
回収は、基本的に短期間で行われます。長期的視点で行われると投資と呼ばれますが、いずれにせよ、できるだけ早く成果を出すことを良しとします。
ギブアンドテイクの関係は「差し出すものがある時にだけ」成立します。
この関係だけで経営を行うと、どんなことが起きるでしょうか。
ギブアンドテイクは、本当に困った人を救うことはできません。なぜなら、本当に困った人は差し出すものがないからです。
例えば、なんとか組織に貢献したいが、何らかの事情で力が発揮できないということは誰にも起こり得ることです。
そういう人が救われない。
ギブアンドテイクの論理は、人が本当に困っている時に当人を苦しめます。
例えば、差し出すものがない社員であっても、簡単に解雇することは難しい。そうなると本人は、ギブができないのにテイク(賃金)を受け取ることになります。
この時に、賃金を支払う経営側に被害者意識が生まれまることは容易に想像ができます。
差し出すことができない社員は、自らを加害者と捉えるようになります。そうなると、もう会社にいることができなくなり、自ら去るか、去っても行く場所がない場合、精神が破壊され最悪の選択をする場合もあります。
「そんなに困っているなら公的な助けを求めれば良い」と思うかもしれませんが、現代社会はギブアンドテイクが基本原理なので、申請には心理的抵抗がつきまといます。
これが僕が、ギブアンドテイクが生きづらい社会をつくると考える理由です。
とは言っても、ビジネスからギブアンドテイクを排除することはできません。
そこで、もう1つの論理を同時に走らせるデュアルスタンダードが必要になると考えるのです。
もう1つの論理とは「贈与」です。
贈与とは、「見返りの保証もないのに、相手に与え続ける行為」と定義しています。その代表が、親が子に対し行う施しです。例えばクリスマスプレゼントです。サンタの手柄にしてまで子どもを喜ばせるのだから、相当なものですね。
贈与とギブアンドテイクの違いは、ギブアンドテイクが、相互の閉じた関係なのに対し、贈与は「広がる」可能性を秘めていることです。
クリスマスプレゼントを受け取った子は、恩を親に返すこともありますが、自分が親になった時に自分の子どもに同じようなことをして恩を送ります。
贈与は、それをくれた相手以外の「誰か」に送る可能性を秘めている。
時間を経て「未来の誰か」に送る…「他者性」と「未来性」が特徴です。
そう考えると「おくる」は「贈る」と「送る」と2種類の表記があることに深淵なものを感じますね。
本当に大切で幸せなものは贈与でしか手に入れることはできません。
例えば、レストランで顧客が対価を払った上に、さらにそこに「美味しかったです」と感謝の気持ちを上乗せすることがあります。それを言う理由は「伝えたいから」で、まさに贈与行為です。
その上乗せ分は、それを口にした顧客も、受け取ったシェフもスタッフも、さらにそれを聞く周囲の顧客をも幸せにします。
対価を払えば、料理は食べることができますが、本当に大切で幸せなものは上乗せ分でしか手にすることができないのです。
差し出すものがない社員に対し贈与を行っている企業が実際にあります。具体的には、上司や仲間が支援をするわけですが、贈与する動機は、それが幸せで価値あることと思っているからです。
その施しを受けた人は、それを時間を経て他者に送る(贈る)でしょう。
この様子は、キャンドルリレーのようです。
キャンドルリレーとは、結婚式で、新郎新婦からゲストへ、ゲストからゲストへ、キャンドルの炎を繋いでいくセレモニーです。
時代は大きく代わりました。
ビジネス界では、以前は、行動量が成果に直結したので、頑張れば差し出すことができました。
それが知恵の時代になり、差し出せる人と、そうでない人との間に大きな差異が生まれています。
ここ1年間「贈与」というテーマで社会と企業を観察してきて、今後、社会活動の原理が変わると感じています。
ギブアンドテイクと贈与は、相反するものではありません。
同時に走らせる、デュアルスタンダードが可能だと考えています。
指示ゼロ経営が、そんな世界像に貢献できればと思っています。
というわけで本年もよろしくお願いします。
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