消費と労働の価値観が強制的にアップデートされる時代
経済が発展する3要素に「人口増」「生産性向上」「新規価値創造」があります。
これは、そのまま企業発展の要素と捉えることができます。
例えば、テレビが日本で販売され、放送が始まったのは1953年でした。
テレビという、これまでになかった新しいものが生まれ(新規価値創造)、同時に人口は絶賛急増中でした。
市場は、テレビが欲しくて行列待ち状態ですので、メーカーはリードタイムを短縮すること(生産性向上)で、急速に普及させることに成功しました。
作れば売れる、商売が楽しい時代です。
今は、3要素が崩れつつあります。
日本に関しては、2008年をピークに、長らく続いた人口増加期が終焉し、今後は長い人口減少期に入ることが分かっています。
世界に目を向けるとどうでしょうか?
世界の人口はいまだ伸長していますが「増加率」を見ると、1960年代をピークに鈍化トレンドにあるのです。
生産性向上はどうでしょう?
今後もDX化などによる生産性向上は欠かせませんが、生活者はモノに満たされているので、効果は限定的です。
例えるならば、流しソーメンで、「もう食えん」と言っている人たちに向けて急速に投入するようなものです。
1950年代〜1980年代は、買ったマイホームの空白に、冷蔵庫や洗濯機、テレビやステレオなどのモノたちを埋めることに胸をときめかせました。
そのために黄色い栄養ドリンクを飲んで、モーレツに働きました。
それが、今は家の中に空白をつくりたい人が増えています。近藤麻理恵さん(こんまりさん)の本が世界的ベストセラーになったのがその表れではないでしょうか。
90歳の我が母は「モノを始末するなんて罰が当たる」と怒るのですが、今はそういう時代なのです。
ちなみに母は、「ちょっと壊れたらゴミで出すようなものは買うな。職人が作った長く使えるもの、壊れても直してもらえる本物を買え」と言います。
物質的に豊かになるという動機が弱くなった人たちで溢れかえっているのだから、企業は顧客に対しても社員に対しても、まったく違ったアプローチをしなければなりません。
そのヒントは、今、30歳〜40歳くらいの若い世代に見ることができると思います。
今から15年ほど前に、僕が所属していた「日本感性工学」の研究会で、当時の20代の若者が不思議な消費行動をとると話題になりました。
それは、ブランド品には興味を示さず、例えば、しまむらで買った安価な服に、自分なりに手を加えて独自のアイテムにしてしまうということをするのです。
今日の記事の言葉を使えば、「新規価値創造」を若い頃からやっていた世代です。
その世代は今、経済活動の中心層になりつつあります。おそらく、あなたの街にあるユニークなお店を経営し、繁盛している人たちではないでしょうか。
彼らは、「昨年対比◯◯%UP」なんて目標は立てていないと思います。僕の知り合いには1人もいません。モチベーションにならないどころか、意味すら感じていないと思います。
彼らが意味を感じていることが、今後の消費と働く意欲のヒントになると考えています。
少し前までは、そんな若者に対し「欲がなくて困る」などと言っているオジサンがいましたが、気づけば彼らの価値観が標準化しつつあります。
世代を超えて価値観が変わっているとすれば「豊かさ」を社会全体でアップデートする時期に差し掛かっているのかもしれません。
若い世代は欲がないのではなく、欲が高度化しているということだと思います。
オジサン世代は、時代に取り残されないようにしなくちゃですね。