経営に「物事を丸ごと観る」という視点を取り入れる

この時期、僕はホワイト企業大賞の審査で全国を飛び回り、素晴らしい企業の生の現場を見る恩恵にあずかっています。
ここで言う「ホワイト企業」とは、世間一般が考える「労働条件や福利厚生などが充実している社員に優しい会社」という意味ではなく、働きがいや自己実現など、より高度な幸福を志向している企業を言います。
現場で働く社員さんにインタビューすると、心から仕事を愉しんでいることが分かります。「休日明けに出社するのが楽しみ」という方もいるほどです。

さて、そんな企業の経営者は、ある特徴的な視点を持っていることに気付かされます。
それは…

「事象を丸ごと観る」

という視点です。

人類は、物事を分析する手法として2つのアプローチを開発しました。

1、物事を要素分解・分類し整理して解釈する。
2、物事を「丸ごと」観る。

哲学の世界では1を「ロゴス」と、2を「ピュシス」と言います。

例えば、米澤晋也という人間を分析する際に、現在ではロゴスのアプローチを用いるのが主流です。まず肉体と精神とに分類し、さらに肉体を、脳、消化器、循環器、呼吸器などと分解し、それぞれを見ます。

そのお陰で医学が発達したのですが、その結果、米澤晋也という存在が理解できるかと言うと、全くもってそうではありません。

人類は、ずっと自然や生命をロゴス的アプローチで攻略してきましたが、その手法を極めるほどに「分かれば分かるほど、解らなくなる」というジレンマに陥ります。
要するに「頭でっかち」なのです。

先日、美術展に行った際に、僕のとなりにそんな人がいました。
彼は、絵の細部を見ては、タッチがどうとか、絵の具の乗りがどうとか解説していましたが、絵そのものから放たれる生命力を感じ取っているようには見えませんでした。

心と身体は切り離すことができないことを表す「心身一如」という東洋思想があります。最近では、感情は脳だけで生成されるわけではないことが分かっており、ピュシスの機運が高まっています。
ロゴス的アプローチが行き着くところまで行った今だからこそ、欠かせない視点だと思います。

話を経営に戻します。
経営の世界ほどロゴスに支配されている分野はないと思います。
例えば、KPI(目標達成に向けた各プロセスにおける達成度や評価を示す指標)をはじめ、ジョブ型雇用といったものがまさに、その典型だと思います。

そういう企業の中には、ロゴスを追求し、ピュシス的に不健全になった企業もあります。
その多くが、短期的には成長しますが、中長期的にはおかしくなる傾向があります。

ホワイト企業大賞に応募される企業のリーダーは、自社を「1つの生命体」として捉えるピュシス視点を持っています。
だから、審査する側もその感性が求められると思うのです。
僕は、審査員の先輩に「審査する際には、まずは思考を止めて『空気を丸ごと』観るようにしなさい」と教わりました。

今日の記事は、非常に掴みどころが曖昧な話だと思いますし、そもそもピュシスを言葉で説明すると、結局はロゴスになってしまいます。
それでも、当ブログの読者なら、きっと何かを感じ取っていただけたのではないでしょうか。

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