顧客第一主義を貫いたことで生まれた画期的なサービス
「お客様第一主義」という言葉がありますが、これを貫くのはとても覚悟が要ることだと思います。
本当に、お客様を第一に考えたら、お客様の希望に沿わない対応をしなければならないことがあるからです。
そもそも、お客様の何を第一に考えるのでしょうか。
「お客様第一主義」をGoogleの検索にかけると、次のように出ます。
お客様第一主義とは、企業が顧客のニーズや事情を優先し、顧客満足度を高めることを目的としたビジネス戦略です。顧客中心主義とも呼ばれ、販売やマーケティングのコンセプトとして、製品よりも顧客を重視します。顧客の期待やニーズ、願望をマーケティングの出発点として、ポジティブな顧客体験を提供し、長期的な関係を築くことを目指します。
想定どおりの答えですが、この解釈では、真の顧客第一を貫くことはできないと思います。
「顧客の期待やニーズ、願望をマーケティングの出発点として」とありますが、これに基づくと顧客の利益が損なわれることがあります。
とても怖い事例があるので紹介しますね。
あるドラッグストアのエピソードです。
もう30年も前の話ですが、ある店舗では、店長が毎週水曜日に必ず、液体咳止め薬を2本発注します。部下が理由を聞いても、店長は「お客様第一だよ」と話をはぐらかすと言います。入店したばかりの新人は、自分にはまだ分からない商いの真髄があると、とても関心を持ったそうです。
しかし、その後、理由が分かり戦慄が走りました。
毎週金曜日の夕方に、ある男性が必ず咳止め薬を買いに来るのです。そして、翌朝、開店と同時に、目の下にクマを作ったその男性が、また同じ商品を買いに来るのです。
その男性が、何ために咳止め薬を買ったのかは分かりませんが、危険な使い方をしている可能性が高いと思います。
店長は「顧客の期待やニーズ、願望」をもとに判断したのだから、定義上はお客様第一主義ということになります。
しかし、倫理が足りません。
お客様の利益を第一に考えれば、まったく違う判断になるはずです。きっと、店長が言う「お客様第一主義」は宣伝用の言葉で、本当は「業績第一主義」なのだと思います。
倫理に基づいた商いのエピソードとして、Googleと米国防総省との業務提携に対する、社内の抗議運動の事例があります。提携の内容は、軍事用無人ドローン向けのAI開発です。
これに対し、社員から「グーグルは戦争ビジネスにかかわるべきではない」と抗議活動が勃発し、辞職者が相次ぎました。
結局、契約は白紙になったわけですが、同社が掲げる「邪悪にならない」という社是を体現したエピソードです。
最後に、お客様第一主義から生まれた画期的なサービスを紹介しますね。
商いの極意として「先義後利」という概念があります。文字どおり「義」を優先することで後から「利」が生まれるということです。
儒学の教えですが、日本においては、その昔、越中売薬がこの思想に基づき「先に一通りの薬を預けておき、次に訪問した時に、使用した分の代金だけをいただく」という画期的なサービスを開発しました。
サブスクのはしりですね。
とかくサブスクは、自社の利益の安定化を目的にしがちですが、それは、目的ではなく「義」の産物だということを認識する必要があると思います。
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