ビジョンに向けての旅が「死へ行軍」にならないために

ビジョンの大切さは誰もが知っていますが、ビジョンと共に「現在地」を確認することも同じくらい重要だと思います。
「札幌に行く」と、行き先を決めても、現在地が分からなければ右往左往するだけです。
現在地が分かると、もっと別の行き先が最適だということが分かることもあります。

ビジョンは現在地とセットで成り立つということです。

ところが、企業は現在地を確認しないままに旅に出てしまうことがあります。
恥ずかしいのですが、僕自身の体験が分かりやすいので紹介しますね。「あらゆる意味で間違っている」ということがご理解いただけると思いますので 笑

ご存知の通り、新聞は衰退の一途を辿っています。2000年に5300万部だった発行部数は、2023年には2800万部にまで落ち込んでいます。(出所:日本新聞協会)

そんな中、僕は、「衰退期にあっても日本一の普及率を実現する」というビジョンを掲げました。
これを聞いてワクワクする人はいないと思いますが、これは目標であってビジョンではありません。
ビジョンとは「視覚」ですので、未来の「その日」が動画のように再生されるものでなければビジョンと呼ぶことはできません。

「動画のように」ということは、そこに動きがあるわけです。
動くものとは何でしょうか?
風にゆらめく木々の葉でも良いのですが、やはり「人」ではないでしょうか?自社と関わる人が、喜んでいたり、悩みから解放されて安心している顔が見えて、初めてビジョンになるのではないでしょうか。

さて、話を本題に移します。
当時、僕は「現在地」を正しく把握しないままに冒険に出てしまいました。現在地を把握するとは、自社が置かれている状況を構造的に把握するということです。

今でこそ、新聞の衰退原因は自明なのですが、当時はスマートフォンも世に出ておらず、先行きが見通せないでいました。

業界の重鎮と言われる人たちは、購読者が減る状況に対し、「その昔、ラジオが登場した時に『もう新聞は不要』と言われたが、新聞は生き残った。その後、テレビが登場した時には『もう新聞もラジオも不要』と言われたが、新聞もラジオも生き残った。だからインターネットが登場しても大丈夫だ」なんていう能天気な自論を吐いていました。

重鎮とは業界の発展に貢献した人たちなので、そう簡単に「敗北」を認めるわけがありません。
その言葉を信じて、間違った行き先に向かって爆進した人が多く現れたのです。

幸いにも僕はメンターが現在地を教えてくれました。
・インターネットの登場で情報の多様化が進むから、マスな情報は読まれなくなる。
・生活者が使える「所得」と「時間」には限りがある。今後はネットにそれらを使うようになる。
・ものすごく小さなパソコンが登場する。

最初は受け入れがたかったのですが、詳細な資料を見せてもらったことで考えが変わりました。

現在地が分かったことで、行き先を変えることができました。
その結果、「自社でやっている指示ゼロ経営を地域に拡張し、地域創生のサポートをする」という方針に転換をしました。地域の課題を地域の人が自律的に解決する文化と仕組みをビジネスにするという構想です。

現在地の確認をしなければ、社員を死の行軍に道連れにしていたと思います。

来年度に計画書を作っている企業もあるかと思いますが、旅が始める前に、いま一度「現在地」を確認してみてはいかがでしょうか。


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