再現性への拘りを捨て「一回性」を大切にしてみる
これまで私たちは「こうすれば必ずこうなる」という再現性の高さというものを無条件に評価してきました。
そのお蔭で、全国どこにいても高品質の製品を手に入れることができるようになりました。
教育でも、同じように勉強すればだいたい同じような学力を身につけることができます。
特に、経営の世界は安定的成長を目指しますので、再現性の高いノウハウはもてはやされ、コンサルタントもそれをウリにしてきました。
ところが、今、真逆の潮流が生まれつつあります。
「一回性」です。
人々は常に希少なものを求める性質があります。
以前は、再現性は希少でしたので、みんなそれを求めましたが、今は再現性が過剰になり、希少な一回性を求める人が増えてきました。
一回性とは、その時、その状況、文脈でのみ生み出される、一回ポッキリのアウトプットです。
例えば、音楽ではライブ(ジャムセッション)がそうです。その時々の流れに身を委ねて演奏するので、二度と同じ演奏をすることはできません。
あるアーティストは、「客の咳払いすら演奏の一部になり、展開が変わっていく」と言います。
↓このピアニストには圧倒されますよ。鳥肌ものですので、是非、御覧ください。
最近、アナログレコードが人気で、CDの売上を超えたそうですが、ここにも一回性の魅力があります。
レコードに針を置いて音が出るまでの時間は一定ではないし、盤の溝に埃があれば「パチパチ」という音がします。
我が家は薪ストーブを愛用しています。今、すごく人気なんですよね。
これまでに2000回以上火を入れてきましたが、一回たりとも同じように燃えたことはありません。
サービス業の世界では、画一化されたサービスから、自分にピッタリな「おもてなし」が求められるようになりました。
「おもてなし」とは、その時、その相手、文脈に合わせ生み出される一回性のサービスです。
今後、AIが普及し再現性が加速すればするほど、対置概念である一回性の価値が高まるでしょう。
私たちは、その時に備え、思考のアップデートが求められます。
しかし、それは少々痛みを伴うものになりそうです。なぜなら一回性は計画的に生み出すことができないかためストレスになるからです。
日常生活を振り返ると、私たちは計画的に事が進まないと不快感を感じます。
・予定外の渋滞が起きた。
・良好を予定していた日に台風が直撃した。
・会議中に、部下が想定外の発言をし出した。
・部下が、期待とは違う進捗報告をしてきた。
再現性に取り憑かれた人は、「予定調和的に一回性を出したい」という矛盾したことを言うのですが、それは「後ろを向いたまま前進する」というくらいおかしなことです。
よく、ノーベル賞受賞者が、自身の発見に対し「偶然の発見だった」ということを言いますが、それは一回一回、違うことが起きる実験を、何度も何度も繰り返すうちに、有意義な一回性が起きたということです。
バルミューダ社の「世界一のトースター」は、大雨の日にBBQ大会を行い、その時に炭火で焼いたトーストがあまりにも美味しかったことがキッカケで開発に至りました。
画一的、予定調和的なものは、すでにこの世に溢れかえっていますし、残された市場は大企業が牛耳ることになるでしょう。
今後、中小企業が活躍するステージは、一回性か、それに近いところに可能性があると思います。
渋滞が起きたら、それを楽しむくらいの感性にアップデートする必要かもしれませんね。
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