中小企業は、世間の潮流と真逆を行く人事戦略で上手くいく
日本企業は、アメリカで開発された経営ノウハウを導入し失敗してきた歴史があります。
その代表が成果主義です。
確か、真っ先に導入したのは富士通だったと記憶しています。1993年に導入し、社内には不協和音が鳴り響き大混乱。10年で業績が悪化し成果主義は廃止になりました。
最近では「ジョブ型雇用」が注目されているようです。
ジョブ型雇用とは、企業戦略を遂行する上で、職務に適したスキルや経験を持つ人を採用する雇用方法です。
料理に例えると、今晩はカレーと決め、必要な食材を買ってくるという方法です。当然、戦略が変われば「パーツ」の入れ替えがあるわけですが、解雇規制緩和がこのトレンドを後押しすると考えられています。
僕は嫌な予感がしています。
というのも、解雇規制緩和の流れを受け、ジョブ型を検討している中小企業があるからです。
ジョブ型雇用は中小企業には向きません。
その理由は2つあります。
1、外部環境の影響を受け不安定だから。
2、創造性が破壊されるから。
まずは外部環境の影響について。
ジョブ型雇用は、ゴールの設定が確かなものでないと成り立ちません。大企業は、大多数のニーズに応える「便利なもの」を扱う商いが得意ですのでゴール設定がしやすいのです。
例えば、ある大手生活剤メーカは、日本国内にある窓の数を把握していると言います。窓の数が分かれば、窓拭き商品の需要も見込めますね。
多くの人が求めるということは、当然、大量生産により、スケールメリットを活かした商いになります。だからひたすらに拡大を志向するのです。
ところが中小企業は、ニッチで移ろいやすい欲求に応える商いをしますので、予定調和的に商いを進めることが難しい。
ジョブ型とは相性が悪いのです。
そうなると、料理で例えれば、今、手元にある食材でできる、ユニークなメニューを考えるという資源活用が有効になります。
ジョブ型雇用は、創造性を破壊する危険性もあります。
解雇がしやすいからといって、人材をパーツのように扱うと、社長と社員は、金銭的な損得勘定だけで繋がった冷たい関係になります。
動機づけ理論の大家であるエドワード・デシは、損得勘定、利用価値だけで繋がった関係に対し、次のような警鐘を鳴らしています。
「報酬で釣ると、本当に価値があると思うことではなく、手っ取り早く大きな報酬が得られる仕事を選ぶようになる」
デシの研究によると、人が真にヤル気になるのは、報酬で釣られた時ではなく「行為自体に価値がある」と思えた時で、その時に自発性と創造性が発動することが分かっています。
成果主義もジョブ型雇用も、「手っ取り早く大きな報酬が得られる」という欲求を刺激するものなので、自発性や創造性が破壊される危険性をはらんでいます。
中小企業が陣を取る商いは、ニッチな欲求…顧客も、提供されて初めて「そうそう、こういうのが欲しかったの」と唸るような商品・サービスを提供する商いです。
中小企業は、大企業の真似はご法度です。
金銭的な損得勘定ではなく、「行為自体に価値がある」と思える意義を商いに吹き込み、それに共感する人をパートナーとして迎え入れる雇用形態が向いていると思います。
すると、世の潮流とは違い、永く雇用することになると考えています。
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