指示待ち人間が自ら考え行動する人間になる「課題設定力」の育て方

よく「ウチの社員には自分で考えず、いちいち指示を仰いでくる」という相談を受けますが、ほとんどの場合、原因は部下ではなく「課題設定の欠如」にあります。

多くの人は、課題が具体的になっていれば解決策を示すことができます。
例えば、「売上を1.2倍にするためにどうすれば良いか」という漠然とした問いでは考えることはできなくても、「売上を1.2倍にするためには、地域の人に自社の存在を知ってもらう必要があるが、どんな方法があると思う?」と聞けば、素晴らしいアイデアを出してくれます。

課題設定が下手なので、自ら考えることができずに「何をやればいいんですか?」と聞いてくるのです。

しかし、課題設定力を持った人は少ないのが現実です。
それは、教育の影響が大きいと思います。私たちは、これまで五教科に偏った教育を受けてきました。五教科では「これが正解」というものが用意されていて、解に向けて効率よく思考することを目指します。

以前に、音楽の教員が「音楽や美術はオマケみたいな扱いになっている」と嘆いていましたが、これからの時代は、正解がないものを扱うアート系の教科が見直されるでしょう。

自ら課題設定ができる人は、高質な仕事をします。
例えば、ホテルのフロントで、咳き込んだお客様から「近くに薬局はありますか?」と聞かれた時に、課題設定力がない人は、単に薬局を紹介しますが、設定力がある人は「このお客様は、咳ができない事情、例えば人前で喋る仕事があるのかも?」と推測します。
それができれば、のど飴を差し上げたり、部屋に加湿器を手配したというサービスを考えることができます。

部下の課題設定力を育てるのはリーダーの重要な役割です。

僕に課題設定力を教えてくれたのは、大学卒業後に勤めたドラッグストアの上司でした。
梅雨明け間近の暑い日のことです。
僕が、いつもと同じように仕事をしていると、上司が「米澤くん、ちょっと来い」と僕を店の外に呼び出しました。
そして「店の前を歩いている人たちは、今、何を思っているか分かるか?」と聞いてきました。

道行く人たちを見ると、ハンカチで汗を拭っていました。

僕が、「シャワーを浴びたい」「冷たいものが飲みたい」と言ったら、上司は「それを叶えるのがお前の仕事だ」と言いました。

シャワーを用意することはできませんが、汗拭きシートを提案することはできます。
すぐに汗拭きシートを店頭の目立つところに置き、「シャワーを浴びたかのような爽快感」というPOPを作りました。

冷たい飲み物を売るためには、氷を買う必要があります。上司に「氷はどうすれば良いですか?」と聞いたら、「自分で判断して手配しろ」と言います。
近くのスーパーで氷を買ってきて、発泡スチロールの箱に入れて売ったら飛ぶように売れました。

自分で考えてPOPを作った。
自分の判断で経費を使った。
売れた。
お客様が美味しそうにドリンクを飲む姿が嬉しかった。

僕が商売の愉しさを初めて知った日でした。

上司は、課題設定力を鍛えるのが上手な人でした。

課題設定力とは想像力だと思います。
「店の前を歩いている人たちは、今、何を思っているか分かるか?」という問いが、僕の想像力を刺激したのです。
そして、僕の発案を全部、やらせてくれました。
もし、売れなくても、自分で考え判断し行動した経験は、僕を成長させたと思います。

部下が、自分で考えず指示を仰いでくるとしたら、課題に気づくような上質な問いが足りないと考えてみてはいかがでしょうか。

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