チームワーク研修をしても効果がないワケ
社内の人間関係やチームワークが悪い時に、それ自体に対策をしても大した効果はありません。
このことは数々の研究から明らかになっていますが、特にインパクトを与えた研究者は、組織論の巨匠として名高いエドガー・シャインです。
彼は、「組織文化だけを変えようとする試みは、必ず失敗する」とはっきりと述べています。
学者をして「必ず」と言わしめるわけですから、そこには相当な根拠があるわけです。
多くの企業が、解決策として、関係性向上研修やチームビルディング研修などを行いますが、まず手を付けるべきは「日々の仕事のやり方そのもの」です。
具体的には「みんなで力を合わせないと達成できない課題」を「チームとして」持つということです。
それがあると、人間関係もチームワークも、自ずと醸成されるものです。
この事は、僕が主宰する「夢新聞」で痛感しています。
夢新聞とは、自分の夢が実現し、その活躍が、将来、新聞に載ったと仮定して、記事を手作りするワークショップです。未来の日付を入れ、文章はすべて完了形で書きます。
ワークショップではチームワークも学びます。
人は長所も短所もある不完全な存在だから、夢は1人では実現できません。パズルのピースが互いの凹凸を補い合うと素敵な絵が描けるように、みんなで能力の凹凸を補うことで、みんなの夢が実現すると考えているのです。
そこで、協働を体験するために、ワークでは、クラスに対し「制限時間(75分)以内に、クラス全員が夢新聞を完成させる」という課題を与えます。
課題を与えることで助け合い、学び合いが活性化し、チームワークが形成されるのですが、それが「ある時」を境に一変しました。
それはコロナ禍です。
コロナ禍に入ってからチームワークが形成されなくなったのです。
原因は三密を避けるといったものではなく、1人1人にタブレット端末が支給されたことです。
新聞の文章構成や表現などで悩んだ時に、協働しなくてもGoogle先生に聞けるようになったのです。
この変化を受け、夢新聞協会では、タブレット禁止が検討されましたが、それは進歩とは言えません。
タブレットを手にした子どもたちが協働すれば、より難しい課題を解決できるはずです。
そこで、紙面に盛り込む内容を増やしたり、制限時間を短くしたりと難易度を高くしました。すると、チームワークが再形成され、より高度な課題を解決できるようになったのです。
人間関係やチームワークを良くしたければ、それ自体への対策だけでは不十分で、チームとして取り組む課題を設定する必要があります。
ここまで読むと、チームビルディング研修などは意味ないと思われるかもしれませんが、エドガー・シャインは、組織文化『だけ』を変えようとする試みは、必ず失敗すると述べています。
社員教育だけでは解決しませんが、社員教育に意味がないわけではありません。
というのも組織は、「個人と環境の相互作用」で変わるからです。
共通の課題を持つと1人1人の意識と行動が変わり、意識と行動が変わることで文化(環境)も変わり、再び意識と行動が変わるという相互関係があります。
社員教育には、この循環を促進する効果があります。
教育と実践する場を同時につくる必要があるということです。