40歳以降に活躍できる人材を育てる

若い世代と仕事をする度に、彼らの情報処理能力の高さに驚かされます。
理解力、判断力が高く、テキパキと仕事をこなすんですよね。
これは同時に、自分のポンコツさに愕然とするわけですが、そもそもそういうものだと割り切るしかありません。

「そういうものだ」というのは、何もネガティブな意味ではなく、年配者には、年を取ると発達する、若者とは違う能力があるということです。

若者が優れているのは、新しい情報を獲得・処理・操作する能力、または新しい問題に柔軟に対処する能力です。これを「流動性能力」と呼びます。

一方、歳を重ねると「結晶性能力」が発達します。これは、経験を重ねることでストックした、概念化、法則化、洞察力などを指します。
長老の知恵のようなイメージでしょうか。

米国の社会心理学者、ディーン・キース・サイモントンは、キャリアの生産性を集計した結果、平均的には20年目に生産性のピークを迎え、その後は急速に低下していくということを発見しました。
20歳から働き始めたとすれば、40歳以降は、プレーヤーとしては劣化の一途をたどるということです。
ということは、40歳までに結晶性能力を身につけ、若いメンバーが活躍しやすい場をつくる「長老マネジメント」が求められるということです。

さらに言えば、40歳までに結晶性能力を身につけるように社員教育をすべきということになります。

結晶性能力はどのようにすれば身につけることができるでしょうか。
その最も有効かつ実用的な方法は「外化」です。
自分や他者の実践を分析し、言語化するというものです。まさに、今、僕が記事を書いていることが外化ですし、これをお読みのあなたも擬似的な外化を体験していると言えます。
自慢になってしまいますが、僕は2011年から、ほぼ毎日、1時間ほどかけてブログを書いてきました。やった人間だから分かるのですが、僕の脳内には相当な結晶化が起きており、人と組織に関することであれば、大抵のことは答えることができます。

外化の方法は、具体的な体験を抽象化するというものです。
例えば、ある企業で不祥事が起きたら、その背景にある組織風土などを分析するという方法です。

企業が日常的に外化の訓練をする方法として、メンバーの実践(具体)を抽象化するという手法が有効です。
実践は、成功事例でも失敗事例でもOKです。

成果を上げた営業マンがいれば、みんなでその要因を分析します。さらに、分析をもとに、自分だったらどんな実践ができるかを考えると一石二鳥です。
「具体→抽象→具体」の思考プロセスです。

最後に、結晶性能力を身につけなかった人がどうなるかをお伝えします。
抽象化ができないので、いたずらに具体的なアイデアばかり出してしまいます。しかし、そのアイデアは過去の経験をもとに出すので的外れなことが多い。
しかし、年配者なので周りが気を遣う。

経験豊富ということの負の側面ばかりが露呈するのです。

「良い年の取り方」という表現がありますが、その第一歩は、結晶性能力を身につけるということだと思います。

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