後継社長が自分の組織をつくるために、就任後に最初にすべき仕事

2代目・3代目の若手経営者の中には、先代が育てた古参社員に手を焼く人が多くいます。
こう言っては失礼な表現になりますが、古参社員の中には、思考が古く、実力もそんなにないのに社内で幅を利かせている人も結構見受けられます。

若手リーダーは、すぐにでも自分が育てたナンバー2を側近に付けたくなりますが、それは組織弱体化を招く可能性があるのでご法度です。

組織の変容は下の図のように、イノベーターからマジョリティ(AからI)に向かい伝播していきます。

新しい風土や習慣を組織に根付かせたければ、最初はたった1人のイノベーターを味方につける必要がありますが、それは往々にして古参社員ではなく、同世代の社員です。
そんな状況で、リーダーが古参社員を雑に扱うと、イノベーターの前に古参社員が立ちはだかり、伝播を妨げるのです。

それはなぜでしょうか?
古参社員の気持ちになれば分かりますが、リーダー派の人間が増えれば、自分はいよいよ隅に追いやられます。それを防ぐためには、自分の味方を増やす必要があります。
リーダーに反対しているのではなく、自分が排除される恐れからイノベーターの前に立ちはだかるのです。
そうなると、社員たちはリーダーに賛同していたとしても、行動が起こせなくなります。

これを放置しておくと、リーダー派と古参派の派閥構造ができてしまいます。そうなると、リカバリにーは相当な年月がかかるでしょう。

以上を考察すると、若手リーダーが最初にすべき仕事は、最も影響力がある古参社員を味方につけることになります。
「組織を変革させるために、あなたの力が必要だ」と伝えることで、ほとんどのケースで、古参社員の恐れは解消し、味方になってくれます。

ある若手社長は、自分の代になった直後に。トヨタ自動車の伝統車「クラウン」の古いCMを古参社員に見せました。
その昔、クラウンは「いつかはクラウン」というキャッチコピーで、憧れの象徴、オーナーの到達点と位置づけたのです。

それから時代は進み、2000年代に入り「ゼロクラウン」が発売になりました。
そのキャッチコピーが秀逸です。

「かつてゴールだったクルマがスタートになる」

古参社員に、これまでの功績を感謝しつつ、一緒に新しいスタートを切ることを伝えるためのメタファーとしてゼロクラウンのCMを活用したのです。

現在、企業が存続できているのは、先代を始め当時に活躍した人たちのお陰です。そこに感謝せずに未来を作ろうとするならば、それは傲慢の極みだと思います。

このことは、後継社長だけでなく、後継マネージャーにも言えることだと思います。

「過去に感謝 現在に信頼 未来に希望」

ドイツの教育哲学者 オットー・フリードリヒ・ボルノウの言葉、心に響きますね。

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