環境を変えずして社員教育をしても効果がない理由

僕のHPに、組織の自律性を無料で自己診断できるコーナーがあることをご存知でしたでしょうか。
組織の健康診断として活用できますので、一度診断してみてください。

20個の設問がありますが、その多くが「環境」を問うています。
人の言動も成長も、そのほとんどは環境で決まるからです。

世界的バイオリニストを多数輩出している才能教育研究会(通称スズキ・メソード)の創始者、鈴木鎮一先生に「人は環境の子」という金言があります。

環境が個々の言動に影響を与え、言動が環境をつくるという相互作用があるのです。

このことは「中動態」という概念でも説明することができます。
中動態とは、能動でも受動でもない様態を指します。例えば、悪事を働いた時に、それが自分の意思であれば能動に、誰かにそそのかされたのであれば受動になります。
ところが、そのどちらでもない様態(中動態)があります。

それが「魔が差す」です。

状況や文脈の影響により、思わずそうなってしまったということです。
「恋に落ちる」「感謝する」「自発的になる」など、私たちの言動の多くは中動態なのです。

1人の人間でも環境に影響されるのだから、集団になると、さらに中動態の影響下に入ります。
例えば、イジメがその典型です。クラスの全員が、イジメは良くないことを知っていますし、クラスからイジメがなくなれば良いと思っています。
しかし、集団の空気に流され、イジメに加担をしたり傍観者になったりするのです。

中動態の視点をもって、組織の自律性自己診断を行うと自社の課題が浮き彫りになると思います。

例えば、設問7に「個人の目標よりも、全社的な目標を重視している社員の割合」を問うものがあります。

人の集団は、一部の人だけが達成できる目標を設定すると、必然的に「競争」が起き、みんなで力を合わせないと達成できない全体目標があると「共創」が起きます。(Deutsch,M 1949「競争と協働」)

かつての巨人軍が名選手を集めても勝てなかったように、チームのパフォーマンスは、メンバー個々の能力の総和で決まるわけではありません。
共創・協働の力が高いと、総和以上のパフォーマンスを発揮するのです。

設問18の「相対評価(S・A・B・C・Dなど、個々で差がつく評価)で、個々の社員の賞与や昇給額が決まる成果主義賃金制度がある」は、助け合いと学び合いに関わる要件です。

相対評価では、仲間の評価が上がると相対的に自分の評価が下がる可能性があるので、仲間の活躍を望まなくなります。
逆に、仲間がコケると自分の評価が上がるので、仲間の失敗を喜ぶという殺伐とした職場になります。

健全な職場をつくりたければ、まずは環境に着手することです。
環境がメンバーの意識をつくり、意識が環境をつくるという相互作用により、組織風土は進化します。

環境の見極めと、その環境をみんなで作るというのが指示ゼロ経営のマネジメントなのです。

是非、診断を環境設定に活用してください。一度やったことがある方も改めてやると、組織の成長を実感できると思います。
↓診断はこちら。
「組織の自律性自己診断」