社員教育の動機が「弱みを矯正する」だったら教育などしない方がいい。

部下に気に入らない部分があり、それを矯正しようという動機で人材育成をするならば、そんな教育はやらない方が良いと思います。

その人が持つ、個性の原石を、その人ならではの最高な形に仕上げることが人材育成の要諦です。
同時に、パズルのようにメンバーの個性を組み合わせて、組織として全体最適を図るのが組織開発というものです。

この考え方に対し「現実はそんな甘くない」という人がいますが、おっしゃる通り、人材育成は甘くはありません。甘くないことを承知で、それから逃げないで挑戦しようと提言しているのです。

矯正的な教育は、スポーツの世界ではよくあることのようです。

❚これは短所ではなく、イチローの長所である

オリックス時代、イチロー選手の振り子打法は、土井正三監督により「こんな打ち方が一軍で通用するはずがない」と全否定されました。

コーチ陣から徹底した矯正指導を受け、その結果、フォームが大崩れし二軍落ちしました。
これを救ったのは、河村健一郎 打撃コーチでした。
首脳陣に「これは短所ではなく、イチローの長所である」と説得し、イチロー選手とともに振り子打法に磨きをかけました。
振り子打法が認められたのは後になって、監督が仰木 彬氏に就任してからです。個性を解放する指導者のもとで才能が開花し、世界に羽ばたいたということです。

❚河原で見つけたダイヤモンドの原石

巨人軍の打撃コーチ、荒川 博氏は、河原の散歩中に素振りに励む少年を目にします。
バットを降る様子に違和感を感じ、少年に話しかけます。

「君は本当は左打ちだろ?」

実は、少年は兄に憧れ、左利きなのに右打ちをしてたそうです。
その後、荒川氏は、少年の才能に惚れ込み、自宅に招きバッティングの指導を行います。
その後、少年の身体的特徴に合った「一本足打法」を開発し、世界の王貞治が誕生したのです。

❚フォームの矯正を一切せずに、野茂の個性を伸ばした高校野球監督

幸運にも頭の古い人たちの矯正を免れたのが、野茂英雄です。
彼は、強豪校の推薦に失敗し、公立の成城工高に入学します。「トルネード投法」は非常にユニークな投法なので、強豪校では認められなかった可能性が高かったでしょう。同校野球部の宮崎彰夫監督は、フォームの矯正を一切せずに野茂の個性を伸ばしました。
社会人野球の新日鉄堺へ進む際も、フォームをいじらないことを条件にしたと言います。
プロ野球のキャリアは近鉄から始まりますが、その時の監督が仰木 彬氏だったことに、運命を感じざるを得ません。

アスリートの世界も、ビジネスの世界も、経験豊富で、実績を上げた人が意思決定層、指導層に就きます。
こうした人たちは「自分はこの方法で成功した」という経験則を持っていますが、それへの思い入れが強いほど、違う方法を受け入れ難くなります。

彼らが提唱する成功法は、本人にとって最適な方法論であって、万人に応用できるものとは限りません。
特に、刻一刻と上京が変化するビジネスシーンにおいては、方法論は大胆に変えていかねばなりません。

リーダーは、自分の狭量な視点で生まれた「気に入らない」という感情が人材育成の動機になっていないか、重々、自分の内面を見つめる必要があると思うのです。


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