「最近の若い者には自発性が足りない」というのは本当なのか?

よく「最近の若い者には自発性が足りない」という嘆きを経営者から聞きますが、僕が見る限り、それは間違いだと思っています。
原因は社員の側ではなく、リーダーの側にあることがほとんどです。

原因とは、「目的が不明確」と「難易度が高い」の2つです。

このことを、旅を事例に見ていきましょう。

目的とは、旅で言えば「行き先」です。
行き先が決まりさえすれば「交通手段の確保」「ホテルの予約」「レストランの予約」「レンタカーの手配」など、旅の手配は自発的に考えることができますが、行き先が決まっていなければ難しいでしょう。

同時に、例えば、家族で楽しい思い出をつくるとか、親睦を深めるといった意義を持つことが大切です。意義を感じないことに、人は自分の時間と才能を捧げようとは思わないからです。

旅を経営に置き換えると、どうなるでしょうか。
行き先は「ビジョン」に、成し遂げることは「ミッション」や「パーパス」ということになります。
経営者は、目標数値や「地域1番店」といった行き先は示しますが、その意義については語らないか、語ったとしても一方的に伝えて終わりということが多いと思います。
聞けば、内容は「分かる」のですが、その背景にある意味や文脈を「解る」ためには対話が欠かせません。

次に、「難易度が高い」について。
旅の例で言えば、行き先が決まれば、実現の要件を「交通手段の確保」「ホテルの予約」などと難易度の低い課題に細分化することができます。
大きな目標は、小さく砕くことが大切で、それができれば、ほとんどの人が自発的になります。

経営に置き換えると、例えば「売上高を倍にするには?」という問いでは難易度が高く、多くの社員は答えを出すことができません。
これを、「売上高を倍にするには、1つの要件として、地域の人に当社の存在を知ってもらう必要がある。その方法は何だろうか?」と砕いた問いを投げかけると、「イベントを企画し、メディアの取材を受ける」といったアイデアを出してくれるでしょう。

これらの要件を整理すると、立派な経営計画書になります。
計画書は、模造紙などを使い、みんなで知恵を出しつくることができます。

自発性がないと嘆きたくなったら、「目的が不明確」か「難易度が高い」の2つが原因である可能性があります。
今一度、チェックしてみてはいかがでしょうか。

それにしても、なぜ「最近の若い者は…」と若者に限定するのでしょうか。
僕の勝手な推測ですが…
企業の上層部にいる人たちの多くは50以上代です。彼らが若者だった時代は、昭和と平成の境目でした。
それまでは、特別にビジョンなど描かなくても頑張れば報わた時代です。ビジョンはアメリカが「これが豊か暮らしだよ」と実例として示してくれ、それに向かい、決められたタスクを積み重ねることで企業の業績も良くなり、賃金も上がりました。
自発性が発揮されやすい環境だったということです。

その頃の自分たちと今の若者を、単純に比べても仕方がありません。

「最近の若い者に自発性が足りない」と感じるのは、若者の問題ではなく、正解がない時代に入り、企業がビジョンを設定できなくなってきているからではないでしょうか。


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本日の記事の内容=プロジェクトマネジメントを学びます。
・全員参加のプロジェクトの組み立て方
・自発的、継続的にPDCAを回すための仕組み
・プロジェクトを3日坊主で終わらせない仕組み
年内最後の開催です。