トップダウンは、部下の成長の千載一遇のチャンスを奪う

今、多くの人がトップダウン組織の限界を感じています。
ここでいうトップダウンとは、細かなことまで管理し、部下の思考と行動の自由を奪うマネジメントを指します。
改めて、その理由を考えてみると、真っ先に、一部の人間による意思決定の限界をあげることができます。
トップダウン組織では、経験豊富な人が出世し意思決定の権限を握りますが、そもそも正解がない時代では、経験豊富ということがマイナスに作用することが多いのです。
変化が激しい時代において、そんな人が判断の舵を切っていたら組織を破滅させかねません。

ただし、事業の想いやビジョン、世界観に関しては1人の人間が決めるべきと考えています。
そもそも正解がないのだから、事業ビジョンは「こんなことがしたい」「こんなものが作りたい」「こういう世界を作りたい」という、願望で決めるしかありません。
何が正解か?という他者軸を判断基準に置くと、他所と変わらない凡庸な事業になり、人を惹きつけることはできません。
願望に共感した人たちでないと自律的には動かず、結果的にトップダウンが必要になるという皮肉を招きます。

目的地を決めたら、そこへの行き方を考えるわけですが、これが無数にあり試行錯誤をします。その時に、過去にこだわる経験豊富な人が足を引っ張るということです。

他にも、トップダウンには、社員が無関心を引き起こすという弊害があります。
人は、意思決定に参画した分だけ物事を自分事にします。自分事になると自発性と創造性、思考の粘り強さが生まれます。
意思決定に参画しないと他人事になり仕事に身が入りません。その頼りない様子を見た上司は指示命令を強め、さらに他人事が加速するという悪循環にはまります。

この他にも、意思決定から実行までに時間がかかるなど、挙げれば切りがありませんが、今日は人材育成への弊害を取り上げたいと思います。

人が最も成長する時は、想定外を体験した時ということが学習科学の研究で明らかになっています。
もっと正確に言うと「自分で決め行動したが、期待通りの結果が得られなかった時」です。
これまでの常識や固定観念が崩壊した時こそ、成長の千載一遇のチャンスということになります。

ソクラテスは、このことを「無知の知」という概念でまとめ、熟達へのステップを次のように示しました。

1、知らないことを知らない。
2、知らないことを知っている。
3、知っていることを知っている。
4、知っていることを知らない。

想定外の体験は、自分が2の状態にいることを知る絶好の転機ということです。
トップダウンでは、そのチャンスを上司が奪ってしまい、成長するのは上司ばかりということになります。

ちなみに、2の状態に入った人は、知識が欲しくてしょうがないという状態です。上司がアドバイスをするのも、研修を紹介するのも、この時が好機ということになります。

今日の記事はトップダウンをディスっているように感じられるかもしれませんが、僕が伝えたいことは、状況・文脈とリーダーの個性を勘案し、自社の最適な経営スタイルを取ろうということです。

外部環境に影響されず、やることが単純な場合はトップダウンの方が上手くいくと思います。

次のような状況に置かれているならば、社員が自ら課題を見つけ、協働でプロジェクトを進められる自律性の高い組織が向いているでしょう。

▢変化が激しいため、現場で素早く対応する必要性を感じている。
▢正解がない時代において、リーダー1人の能力で組織運営するのが難しい。
▢トップダウンでは社員が「やらされ」になり、仕事を自分事にしない。
▢働き方が多様化し、お金や出世が働く魅力にならなくなっている。

結局、多くの企業が当てはまるということになると思います。

僕のブログの読者には、トップダウン経営をされている方は少ないと思いますが、今日の記事は、自身の方向性が間違いではないことの確認にご活用いただければと思います。


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