Amazonのリモート廃止から学ぶ、学習する組織のつくり方

先日、Amazonが社員に対し、週5日出社を義務付けたというニュースが報道されました。
その前には、リモートワークの立役者であるZoomが、社員に週2日の出社を義務付けましたね。
どうやら「脱リモート」のトレンドが進行しているようです。

Amazonは、廃止の理由を「対面の利点が大きいから」としていますが、具体的にはどのような利点なのでしょうか。

このことは「場に埋め込まれた学習」という概念で整理することができ、リモートワークの有無に関わらず、人材育成やアイデアの創出において有効な気づきを得ることができます。

「場に埋め込まれた学習」は、カリフォルニア大学の人類学者ジーン・レイヴとエティエンヌ・ウェンガーが提唱する概念で、背広の仕立屋で、新人が職場に入って様々なことを学んでいく様子を観察する中で発見した学習様式です。

何やら難しそうな話ですが、要するに「一緒に仕事をしながら、必要なことを学んでいく」…徒弟制度のことです。

学びのチャンスは、ランダムに起きます。
例えば、急にお客様からクレームが入り、職場が「どうしよう?どうしよう?」とバタつきます。そんな時に、ベテランが上手に対応するのを目にし、その後、対応のコツを聞くことで活きた学びを得ることができます。
その場にいて、文脈を知っている人しか学べないことがあるのです。

職人の世界では下積みを大切にする文化がありますね。これに対し、非合理的と批判する人がいますが、そんなことはありません。
先輩のもとで下積みをしながら、偶発的な出来事を通じ成長する、非常に理に適った方法なのです。

これが「喫煙室は最高の情報交流の場」と言われる所以だと思います。
「そんなものはタバコ吸いの言い訳だ」という人がいますが、予め話題が決められていない場で、流れの中で偶発的に起きる対話は価値が高いのです。

スティーブ・ジョブズの評伝「Steve Jobs」の中に、ジョブズ氏の言葉として次のようなものが紹介されています。

「創造性は何気ない会話から、行き当たりばったりの議論から生まれる。たまたま出会った人に何をしているのかを尋ね、うわ、それはすごい、と思えば、いろいろなアイデアが生まれてくる」

まさに創発について語っているわけですが、こうした学習機会は、オンライン空間では難しいということで、出社を復活させる企業が増えていると考えることができます。

脱リモートの動きはGoogle社などでにも広がっています。
Google社には「20%ルール」といって、勤務時間の20%を、通常業務以外のどんなことにも自由に使える制度があります。
GmailやGoogle Mapsなど、秀逸なサービスがこの時間で生まれたと言いますが、これもオンライン空間では難しいでしょう。

一連の報道を見ると、リモートワークの是非ばかりが議論されますが、本質はリモートうんうんではなく、課題が決まっていない「ふらっと集まる場」が大切ということではないでしょうか。
本質がつかめれば、同じ効果をオンライン上で再現する方法も見つかるかもしれません。

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