「組織は必ず劣化する」という前提をもって経営する
行動経済学では「人は損を避ける」という前提に立ち、人間の様々な行動を説明しています。
例えば、こんな実験があります。
当たりとハズレが半々のクジを用意します。当たりを引けば1万円がもらえる。ハズレを引くと5,000円払わなければならないという設定です。
辞退するという選択肢もあります。
すると、多くの人が辞退を選ぶそうです。確率は半々で当たった場合の報酬の方が大きいのだから、合理的に判断すれば挑戦ということになるのですが、実際は辞退する人が多い。
「損をしたくない」が判断の最優先事項だからです。
この実験に、もう1つ「辞退しても3,000円もらえる」というオプションを提示すると、さらに多くの人が辞退を選ぶそうです。
このことを企業経営に当てはめると次にようになります。
・新しいことに挑戦すると飛躍の可能性がある。
・失敗すれば痛手を被ることになる。
・挑戦しなくても、しばらくは困らない。
挑戦がいかに難しいことかが分かりますね。
事業は、失敗リスクを背負って挑戦する「創造」の段階と、その後、安定運営するための「オペレーション」の段階があります。
創造のフェーズではクジに挑戦するタイプが、オペレーションのフェーズでは失敗リスクを回避できるタイプが活躍します。
オペレーションの段階に入った組織では、後者が圧倒的多数を占めることになります。
後者が求めるリーダー像は「失敗をしない人」であり、自分と同じ人種の中で、最もデキる人をリーダーに望みます。
経営が民主的であればあるほど、そういう人がマネジメント層に選出される宿命にあるのです。
しかも、安定化に成功した会社ほど、安定志向の人が応募しますから、この傾向はさらに加速します。
しかし、事業にはライフサイクルがあり、必ず今の事業は陳腐化します。
再び挑戦に迫られることになりますが、損をしたくない人で固められた組織にそれはできません。
だから、普通に経営していたら、組織は必ず劣化すると考えるのです。
リーダーは、みんなに支持される人ではなく、そのフェーズに相応しい人を選出することが大切です。
ここでいうリーダーとは、社長はもちろんですが、部門リーダーも含みます。
僕の大先輩の社長は、自分が引退する数年前から、「次の社長はオペレーションに長けた人に任せる」と宣言していました。
また、別の社長は、「次期社長は、失敗を恐れず挑戦する『アホなやつ』にやってもらう」と言っていました。
両者の宣言は、自社が転換期にあることを既存社員に知らしめ、適切なリーダー選出を促すためだったと言います。
経営は、今の状態がずっと続くことはありません。転換期を乗り越えるためには、「組織は必ず劣化する」という前提に立ち、再生のシナリオを準備しておくことが大切だと思います。
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