なぜ航空機事故はベテランパイロットのもとで起きるのか?

航空機事故の調査統計によると、航空事故は、機長が操縦している時の方が事故発生率が高いことが分かっています。
ベテランなのになぜでしょうか?

その理由には諸説あるようですが、組織論で整理した説が有力視されています。
パイロットの世界は、非常に上下関係の規律が厳しいので、機長の運転に対し、副操縦士が物申すのは心理的な抵抗があります。
意見の多様性がないことが事故発生率に表れていると考えられています。

このことを示す別の調査があります。
南カリフォルニア大学は、過去50年分にわたる、エベレスト登山隊、3万人以上のデータを集め、登山隊の出身国と遭難事故の発生率について調査しました。
その結果、権力に依存する風土が強い国の登山隊の方が事故発生率が高いことが分かりました。
「上の言うことに無条件に従う」という文化では、刻一刻と変化する状況に対応できないということです。

権力に依存する風土ということで言えば、日本は、比較的その傾向が強いことが分かっています。総理大臣が変わった当初の異常な期待ぶりを見ても、SNSでズタボロに酷評する人が多いのを見ても、その傾向が強いと言えるでしょう。

イギリスなど、権力への依存度が小さい国では、何かある時、部下は、前もって上司に相談されることを期待すると言います。
的確な指示を与えてくれることを期待する日本とは大きく違いますね。

正解がない動乱の時代では、この文化を引きずっていたら生き残ることは難しいので、嫌でも自立を求められるようになるでしょう。

最後に企業単位でできる対策を紹介したいと思います。
まずは、採用の改善です。
石を投げれば依存心の強い人に当たるわけですから、よほど工夫をしないと自立した人を採用することはできません。
採用の際には、自ら考え行動する愉しさとともに、大変さを伝えることです。
「愉しいけど大変」と「大変だけど愉しい」ではニュアンスが違いますよね。後者を言える人を採用すべきです。

航空機事故では、機長が副操縦士に操縦を任せた場合、副操縦士は上司のアドバイスを受けることができますので、知の多様性は向上します。
それに習えば、リーダーは積極的に部下に仕事を任せた方が良いということになります。

仕事を任せる時は、「何をするのか」ではなく「何を成し遂げるのか」を伝えることが大切だと考えます。自立した人は、物事を成し遂げる方法を考える力を持っています。今、その力が開花していなくても、訓練で育てることができます。
「何をするのか」を教えてしまうことは、自分で考える機会を奪うことになり、成長の芽を摘んでしまうことになります。

組織変容のインパクトで言えば、採用が最も影響力があります。当ブログの「採用カテゴリー」に、採用に関する記事が豊富にありますので参考にしてください。


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