終焉から始める経営計画

10月から新しい期が始まる会社も多く、毎年、この時期の経営計画に関する記事を書いてきましたが、今日は、最新の情報を加えアップデート版を公開したいと思います。

経営計画書は、その企業が立っているステージにより作りが変わります。

大別すると次の2つの形があります。

1、「あり方」は変えずに「やり方」を変える計画。
2、「あり方」そのものを変える構想。

あり方とはビジネスモデルなどの商売の土台ですが、ここを間違えると、やり方をどんなに工夫しても経営は上手くいきません。

例えば、新聞業界の事例を紹介します。
御存知の通り、紙の新聞はスマートフォンの普及で窮地に追い込まれました。言うならば、ビジネスモデルの賞味期限切れという状態です。
実は、このことは10年以上前から予測されていたことであり、業界をあげて対策を立てなければならなかったことです。
具体的には、「あり方」…つまり「紙の新聞をつくり売る」というモデルを変えなければならなかったのですが、それをせずに、ずっと営業方法(やり方)などの改善に留まっていたのです。

ビジネスモデルの賞味期限切れを起こしている場合、商売の形(あり方)そのものを変える必要があります。

まさに「死と再生」です。

死と再生は、「死」が先で「再生」が後です。
アメリカのウィリアムズ・ブリッジズという臨床心理士は「転機」という概念でこのことを説明しています。
失恋、死別、リストラなど、人生の転機を迎えた人を数多く診てきた中で、次の人生の一歩を踏み出せる人は、過去にケリをつけた…つまり「終わらせることができた人」だということに気づきました。始まりの問題ではなく終焉の問題だということです。

ビジネスモデルが賞味期限切れを起こしている場合、終焉から始める必要があると考えます。
終わらせずに始めようとすると、「別れた彼女とよりを戻す」というような計画になってしまいます。

先日、葬儀会社を経営する社長と話をする機会がありました。
話の中で、最近は「葬儀不要論」なるものがあることを知りました。しかし、社長は「終焉」の意味から必要性を語りました。
葬儀により、終焉のマインドセットができるのです。
東日本大震災では、ご遺体が見つからない犠牲者が数多くいます。ご遺族の中には、ご遺体と対面できないために、気持ちに区切りをつけることができず、ずっと苦しんでいる人がいると言います。
そんな方々のために、せめて位牌だけもということで無償で提供したところ、ようやく別れを受け入れることができたと言います。

また、その社長は、終焉のためには「悲しみ切る」ことが大切と考え、そのための環境づくりとして、1日に何組も葬儀を行わないなど、落ち着ける環境づくりをしているそうです。

事業が、過去の延長線上で上手くいく場合は、やり方の改善でOKですが、別の形への変容が必要な場合は、終焉から始める必要があると考えます。

何を終わらせ、何を始めるのか?
今一度、自問自答してみてはいかがでしょうか。


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