「優秀な人が」「ピラミッド型組織で」「分業化された仕事をした時」に起きる悲劇

企業の不祥事報道を見ると、「なんでそんなことを?」と呆れるばかりで、「自社はあんなことはしない」と思うものですが、どんな組織も信じられない愚行を働く危険性があると思います。
違法行為ではなくても、業績に打撃を与えたり、顧客に迷惑をかけたり、社員を苦しませるようなダメな意思決定をしてしまう危険性です。

そんな愚行は組織がある条件下に置かれた時に起こります。

それは

1、優秀な人が
2、ピラミッド型組織で
3、分業化された仕事をした時

という3つの条件です。

このことは数々の心理学者が研究してきましたが、研究者の多くが題材にしたのが、ナチスドイツのユダヤ人大量虐殺において、総合的な指揮を取ったアドルフ・アイヒマンでした。

インターネットで検索すると、裁判中の写真が何枚か出てきますが、彼の風貌があまりに「普通」なことに驚かされます。
まさに「組織のために尽くす優秀な官僚」といったイメージを纏っています。

アイヒマンは、裁判で絞首刑が言い渡されますが、裁判中は一貫して「組織の命令に従っただけ」と無罪を主張しました。「優秀な」組織員が、ピラミッド型組織で、組織の命令に従順に従ったことで悲劇は起こったと考えられています。

命令の遂行は「分業」で行われました。
「検挙」「リスト作成」「運搬」「執行」と細かく役割を分業化しました。
分業化されると、「私はリストを作っただけ」と1人1人の罪の意識は薄まります。

このように整理すると、どの組織でも愚行が行われる可能性があることが分かりますね。

「戦略と分業ルールを決めるのは上の者、実行は下の者」という構図は、多くの企業が採用しているマネジメントスタイルと同じなのです。

日本は、国を上げてこのシステムに従順な人間を育ててきました。
学校はもちろんのことですが、親も、子どもが学校から帰ってくると「今日もいい子で先生の言うことを聞いた?」となんてことを当然のように言います。

「上の命令だから」…この言葉を口にする、アイヒマンと同じような人が世の中に多いことを考えると怖くなります。

昨年の調査ですが、本生産性本部の「新入社員春の意識調査」の中に、「上司から会社のためにはなるが、自分の良心に反する手段で仕事を進めるように指示されました。このときあなたは…」という問いがあります。
これに対し、「指示通り行動する」と答えた人はおよそ4割、「わからない」が約半数、「指示に従わない」が1割程度という結果でした。
4割の人間が指示通りに行動すると、「わからない」と答えた人も同じような行動を取ります。

日本は良くも悪くも村社会の風土が根強く残っています。村社会では、集団の秩序維持が最優先されるので愚行に陥る危険性が高いと言えます。

変化が激しい時代では意思決定の回数が増えます。
意思決定が「危険なロシアンルーレット」にならないように、組織のOSを変える時期に来ているのではないでしょうか?

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