いい会社をつくるのは「自分以外の誰か」ではない。

その昔、電車内でも映画館でもタバコが吸えましたが、今では分煙が当たり前になりました。30年前は、ハラスメントなんて言葉もなかったのに、今では「絶対ダメ」と認識されるようになりました。

こうした変革は、最初は草の根から始まり、徐々に社会に広がり、最終的に大きなリーダシップ(政府など)が動きスタンダードになります。

企業で起きる変革も同じだと思います。
「組織を良くするのか誰か?」という問題に対し、中には、自分にはその影響力がないと考える人がいます。もちろん、最終的にはトップが変わらないと始まりませんが、「始まりの始まり」は一般社員からの働きかけというケースはよくあります。

たった1人の草の根が上げた声が、やがて集団の文化(風土)になるのです。

僕は、色んな企業を見てきて、所属メンバーの言動は「風土」で決まるということを痛感しています。
風土はまさに十社十色なのですが、「どのように風土が作られたのですか?」と聞いても「分かりません。昔からそうでした」という答えが返ってくることが多い。
まさに「醸し出されたもの」…ある環境下で「なった」というのが真理だと思います。

では、環境は誰が作ったのでしょうか?

それは「全員」だと考えます。

所属メンバー1人1人の振る舞いの積み重ねで風土(システム)が醸成されます。
そして、そのシステムによって1人1人が動かされるという構図ができるのです。

人の言動は、本人の意思で行われているように思えて、実はシステムの影響が大きい。
例えば、イジメがそうで、皆んな、イジメがいけないことと知っています。
なのに、そのシステムに身を置くとやってしまうのです。

よく、組織をパズルに例えますよね。1個1個が結合して全体になるということですが、実は、全体の風土により1個1個の形が変わるという、逆の側面があるのです。

パズルついでに言えば、パズルのピースは失くしても取り寄せることができますが、問題は失くしたピースをどのように特定するかです。
実は、失くしたピースの周りの8ピースをメーカーに送ることで特定ができるのです。

エポック社のホームページより。

周りが分かると、本人の正体が分かるというメタファーですが、「周囲の人により、その人の振る舞いが決まる」とも捉えることができます。
それが相互に作用し合ってシステム全体ができ上がるわけですが、ということは、システムは自分も関与して作っているということになります。

あなたが所属する組織の風土は、あなたが関与してできたものということになりますし、あなたの関与で変えることができることを意味します。
しかし、「自分なんて小さな存在だから変えることはできない」と思い込んでいる人が多くいます。

その考えがシステムが変わらない原因だと思います。

「自分なんかが選挙に行っても、政治を変えることはできない」と考える人が増えると、政治が刷新されず、さらに無力感に苛まれ選挙に行かなくなるのと同じだと思います。

何とも説教臭い話に感じると思いますが、イジメの件から、より具体的な方法論を得ることができます。

イジメのボトルネックは「傍観者の数」だということを、京都大学の正高信男教授の研究チームが明らかにしました。学級でイジメが起きた時に、止める子が少ない=傍観者が多いクラスでは、イジメがエスカレートします。逆に、止める人が1人、2人と増えて、それが一定割合を超えた時に収まります。
イジメを起こさない、あるいは起きてもストップできる学級をつくる先生は、イジメっ子の指導だけでは限界があることを知っており、「止める人」を増やす(傍観者を減らす)対策に力を入れます。

企業でも、例えば、ワンマンによる独裁状態は、ワンマン社長と、それに依存する部下、あるいは忖度する部下とセットで成り立ちます。

自分はシステムの一部ですが、その一部から全体を変えることができますし、そんな事例を僕は何度も見てきました。

いい会社をつくるのは「自分以外の誰か」ではないということです。


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