性善説の経営が機能不全に陥る時

人間をどう観るか?で経営のスタイルは大きく変わります。
代表的な人間観に「性悪説」と「性善説」があります。
経営学の世界では、アメリカの経営学者、ダグラス・マクレガーは、両者をそれぞれ、X理論・Y理論という概念で整理しました。

X理論では「人間は本来仕事が嫌いであり、仕事をさせるには命令・強制が必要である」と考え、Y理論では「人間は本来進んで働きたがる生き物で、自己実現のために自ら行動し、進んで問題解決をする」と考えます。

Xのリーダーは、部下が怠けないようにノルマを設定したり、管理・監視を強めます。
Yのリーダーは、部下の主体性を信頼し仕事を任せます。

Xは単純な作業を積み重ねる時には有効ですので、大量生産・大量販売の時代では多くの企業が採用しました。
今のように、創造性や現場の主体的な判断が求められる時代ではYが有効です。

XとY、どちらが正解か?といった議論がありますが、文脈で変わるので、一概に良し悪しは評価できません。
ただ1つだけ言えることは、環境次第で、部下はXにもなりYにもなるということです。

もし、「自分はYなのに部下がXになっている」という現状ならば、無自覚のうちにXが発動する環境を作っている可能性があります。

例えば、自分や自分の部署のことしか考えず、自律的な助け合いや学び合いができないという状態に対し、僕が真っ先に疑うのは「相対評価」です。

相対評価は社内に不健全な競争原理を生む危険性があります。支援した仲間が手柄を立てると、相対的に自分の評価が下がる可能性があります。逆に、仲間が失敗すれば自分の評価上がる可能性がある。
そのような環境なのにチームワークや協働を求めるのは、アクセルとブレーキを同時に踏むようなもので無理があります。

営業社員を売上高で評価すれば、値下げをしても数多く売ろうとし、その結果、売上高は上がったが利益は下がったという不条理を招くことがあります。
製造部門に対し、原価(どれだけ安く作れたか?)で評価すれば、たくさん作り在庫を抱え、会社からキャッシュが減るという事態に陥るでしょう。

社員は、評価どおりに行動したのに、「社員には経営者意識がない」と嘆くのは、お門違いというものです。

あるいは、全体のことが観えず部分最適に陥り、自分中心になっているというケースもあります。
例えば、新聞店の仕事は、購読契約を結ぶ→新聞を仕入れる→事務方が配達の手配をする→折込チラシを入れる→配達する→領収証発行→集金という工程で成り立っています。

組織は最終工程(集金)が終わって始めてミッション達成ですが、各工程のスタッフは自分の業務を次工程に渡して達成と考えることがあります。
彼らに悪意があるわけではなく、工程全体を可視化し、共通のゴールを持たないことが原因です。
工程を可視化し最終ゴールを共有する、かつ、部門間の関係が良好ならば、ゴールに向かい各部署は一体化します。

現在の時代背景と今後を踏まえると、Y理論が主流になることは間違いないと思います。
しかし、「信頼すれば育つ」という甘いものではなく、社員のYの部分が発動する環境整備を忘れてはいけないと思います。


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