計画外の行動…「あそび」を大切にする文化の重要性について

価値観や常識などにパラダイム・シフトが起きる時は、これまでの枠組みでは説明がつかない事象が表れると言われています。

例えば、綿密な計画を立て着実にタスクを積み重ねるという、従来の常識とは違う仕事の進め方が、そこかしこで顕在化しています。
これまでは、職場で、計画にない仕事をしている社員がいれば、「遊んでんじゃない」と怒られるでしょう。
しかし、その「あそび」を歓迎する企業があるのです。

これが何を意味するのでしょうか?

私たちに身近なところでは、バルミューダ社のトースターの開発秘話にそれを垣間見ることができます。同社のHPによると、伝説のトースターの誕生は「偶然」が作用していたことが分かります。
社員の親睦を目的にBBQ大会を企画した時の話です。その日は大雨で中止を検討したのですが「思い出になるから」という理由で決行しました。
このノリが素敵ですよね。

ある社員が、炭火でトーストを焼いたところ、外側はカリッと、内側はしっとりとした、とても美味しいトーストが焼けたそうです。
その時に、「こんな美味しいトーストが焼けるトースターを開発したい」という声が上がり、「世界一のトースター」の開発が始まったと言います。
その後、BBQで焼いたトーストの美味しさの秘訣は、大雨による水分にあることが判明し、上手に水分を含みながら焼くという手法が採用されました。

もし同社が、計画以外のことはしないという文化であれば、偶然を見逃したことでしょう。
「あそび」の文化の賜物と考えることができると思います。

これを文化だけでなく制度として確立しているのがGoogleや3Mです。
Googleには20%、3Mには15%、研究職に、自分が好きに使える時間を与えています。研究者たちは、その時間を「あそび」に使い、色んなことを考えたり試したりします。

ちなみに3Mは、「あそび」と「責任」を両立しています。具体的には、過去3年以内に出した新商品が、売上高の一定比率を上回っていなければならないというルールを設けているそうです。

「あそび」という意味では、僕が経営してきた新聞店では、実に3年間あそびっぱなしという時期がありました。
意図的にそうしたわけではなく、衰退する新聞ビジネスに替わるビジネスを発案できなかったからです。
何をしていいか分からず右往左往したということね。

何をしたら良いか分からないけど、商売はお客様に喜ばれるから成り立つということだけは分かっていたので、全社をあげて、今よりも少しだけお客様に喜ばれることを実践する「モア心地よさ運動」を展開しました。
それは電話応対を丁寧にしたり、お客様に手紙を書いたりといった地道なものです。

運動を始めて3年ほど経った頃、不思議なことが起こり始めました。
お客様から様々な相談を受けるようになったのですが、中には生活困窮など、新聞店に相談するようなことではない案件を受けるようになったのです。

お客様の悩みを分析すると、多くが、地域が抱えている課題だということが分かりました。同時に、問題が多様であるため行政の手に負えない課題だということも分かりました。

その時に、ある幹部社員が、「地域の人が指示ゼロ経営の要領で、自分たちで解決できるようになれば良いのでは?」と言いました。

そのアイデアを行政が評価してくださり、今では、行政の指定管理業者として自律的な地域づくり事業を行っています。

この体験は僕にとって大きな財産になりました。
「正解がない時代」という言葉がひとり歩きしている感がありますが、それをリアルに体験できたのです。

日本人は非常に真面目な一方で、昔から「あそび」を取り入れるの上手な民族です。その遺伝子を思い出す時期に来ているのではないかと思います。


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