最低賃金1500円時代の先に訪れる明るい未来を考える

賃上げムードの高まりを受け、物価高から社員の生活を守ることと、賃上げの原資の確保を同時に考えなければならず、苦しんでいる経営が増えています。

最近になり、苦しんでいるのは社長だけでないことも分かりました。企業によっては、「給料を上げて欲しければ業績を上げなさい」と、原資の確保を、なかばノルマ的に押し付けられ大変な思いをしている社員さんもいるようです。

経営者が、そう言いたくなる気持ちは分かりますが、言ったところで効果はないばかりか、むしろ逆効果です。
創造性を外部のコントロールで上げようとすると、かえって低下するからです。

これは強制や脅しだけでなく、報酬で釣った場合も同様です。

研究者としては、エドワード・デシやリチャード・ライアンが有名ですが、50年も前に、外的なコントロールが創造性を破壊することが明らかになっています。

パフォーマンスが下がる理由は思考の質が低下することにあります。
報酬で釣られた人は、最短で報酬を得ることに意識が奪われ、熟考しなくなります。
思考の質は物事への没入に比例します。趣味やスポーツ、仕事に没入した経験がある方は、純粋な興味・関心で取り組んだ時に深く没入することを知っていると思います。

興味・関心の他にも、自分で決めることができる…「自己決定」と、自分が他者から必要とされている…「居場所感」も創造性を高める重要な要件だといいます。

以上のことから、正しい賃上げの実務が観えてきます。

1、賃金をエサに社員を釣らないこと。
2、賃上げに必要な原資や事業計画の決定に参画できること。
3、仲間と協働し仕事を進めること。

最低でもこの3つは欠かせないと考えます。

賃金をエサにしないためには、公正な賃金制度が必要です。
儲かったら、ちゃんと社員に分配される、業績に紐づいたオープンな制度があると、業績から賃金を計算するできますし、賃上げ額から必要な原資を逆算することもできます。つまり、上記の1と2を満たすことになります。

自律性が高い組織では、社長のビジョンや方針に対し、社員と対話する機会があります。対話を通じ、社員は自分の想いや考えを絡めていくことができるのです。
人は、参画した分だけ物事を自分事にします。ビジョンへの参画があると、事業計画づくりにも参画する意欲が高まります。

トップダウン組織では、経営計画はトップが独断で作り、それを部署や個々の社員に「縦のライン」で降ろしていく方法を取りますが、それだと部署や社員の「横の関係」が薄くなり、創造性を高める要因である「居場所感」を感じることが難しくなります。

社員が事業計画に参画することで、仲間の役割を知ることができ、横の関係が強くなります。自分の居場所だけでなく、仲間の居場所も尊重できるようになります。

僕は、賃上げ問題をキッカケに、従来の組織文化を変える機運が高まればと願っています。
その理由は、先ほどの3つの要件が幸福と密接な関係があるからです。

そういう意味で最低賃金1500円時代の先に、明るい未来を感じるのです。

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