グダグタした発言や質問を大歓迎すべき理由
私たちは、自分の意見を論理的、簡潔に伝えることをよしと教育されてきました。特にビジネスシーンでは厳格に求められることが多い。
グダグダと要領を得ない発言や、感覚的なもの言いは嫌がられますね。
ところが、最近、真逆のトレンドが勃興しています。何を言いたいか分からないグダグダした発言を、むしろ歓迎するトレンドです。答えの出ない事態に耐える力「ネガティブケーパビリティ」もその一種と考えることができます。
グダグダには、人の成長や閃きなどの可能性が秘められています。
私たちは、心のデータベースに、「情動」という得体のしれない記憶を、それこそ天文学的な量、貯蔵していると言われています。
しかも、身を守るために、恐怖体験を優先的に記憶します。危機に直面した時には、思考を迂回して記憶を蘇らせ、避難行動を取るのです。何かに挑戦しようとした時に「勝手に」不安になり身体がこわばるのは、こうしたメカニズムによるものです。
諸説ありますが、情動の情報処理量は、思考の10万倍ほどだと言います。
私たちは、複雑な情動を完全に表現できるほどの言語表現のレパートリーを持ち合わせていません。情動の貯蔵庫は、把握もコントロールも表現もできないブラックボックスなのです。
グダグダした発言や質問が出るのは、情動を言語で上手に表現できないからです。
情動を表現しようと、言葉を選んでいる状態が、他者からは「グダグダ」に見えるということです。
これは、逆に言うと、情動では何かを分かっているということになります。
グダグダを歓迎する人は、ブラックボックスに人の成長の可能性が隠されていることを知っています。
1つ事例を挙げると、部下に不親切な説明をする上司の話があります。
非常に言語化能力が高く、レポートなどは明瞭に書くのに、部下への説明となると分かりづらくなってしまう上司がいました。
その方は、自分の心に得体のしれない魔が潜んでいると感じ、カウンセリングを受けることにしました。カウンセラーはグダグダ表現を歓迎し、納得がいくまでヒヤリングを重ねました。
4回目のカウンセリングで、ようやく自分の心のヒダに触れることができ、分かりづらい説明をする「真の理由」を言葉で説明できるようになりました。
それは本人も驚くような理由でした。
なんと、分かりづらい説明をするのは、部下を迷わせ、自分を頼りにさせたかったからです。
分かりづらい説明をすると、部下は「どういうことですか?」と聞きます。それに答える時に自己重要感を感じることができるということです。
この方は、自己重要感を満たすという目的にために、分かりづらい説明をするという、極めて合理的な行動を取っていたのです。
この心のメカニズムが分からない限り、この不条理から解放されることはないでしょう。
グダグダした発言をしている時は、意識が、情動と思考を行ったり来たりしていて、自分でも自分のことが分かりません。
しかし、自分が何を感じているか分からないという時は、すでに分かり始めているということです。リーダーには、結論を急がず、待つ辛抱強さが求められるのではないでしょうか?
もし、待てなければ、あなた自身が、自分のグダグダと向き合い、内省する必要があるのかもしれません。
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