民主的な経営は社員が不勉強だと成り立たない

何かと世間を騒がせた東京都知事選挙が終わりました。
結果は、現職の当選という定番路線だったわけですが、それ以外では予想外の順位があったりと、何かと話題になりましたね。

ただし、一抹の不安が残ります。それは、投票率の低さ(60%)と、SNSに流れた情報の質にあります。

民主主義は「民が主人」ということですので、主人が馬鹿だったら成り立たない制度です。

この不安は、北欧諸国と比較すると、さらに増します。
2019年の資料ですが、北欧諸国の投票率は、スウェーデン87%、デンマーク84%、アイスランド81%、ノルウェー78%など、どこも高い水準にあります。
同時に、これらの国の国民には、「お金を出して情報を買う」という習慣が根付いています。
つまり「賢い民」が民主主義を支えるという構図が盤石なのです。

また、北欧諸国は「権力格差」が小さいことでも知られています。
権力格差とは、権力を受け入れる度合いを表す指標です。依存度と言い換えても良いでしょう。
度合い(依存度)高いと「権力格差が大きい」ということになります。格差が大きな国の民は、権力に従う一方で、権力者が上級国民であることも許容します。

北欧諸国は、世界でも権力格差が小さい…つまり、民が自立しているのです。
ちなみに日本は世界各国の中で「中の上」の位置づけだそうです。だからこそ、水戸黄門が、ババーンと印籠を出し場を収めると気持ちがいいのだと思います。

このことは経営にも当てはまります。
近年、「サーヴァントリーダーシップ」が注目されています。「上司の理想的なあり方は奉仕である」という思想のもと、上司が部下の主体性と能力を信頼し、自分は支援に徹するリーダーシップスタイルです。

この風潮は、正解がない時代に入り、経験豊富が必ずしも価値を成さないことが分かり盛り上がりを見せています。

サーヴァントとは「召使い」のことですが、これも民主主義同様、主人が馬鹿では成り立たないあり方だと思います。

つまり、「社員教育は、最優先すべき課題」という、冒頭に示した結論に至るわけです。

しかし、現実は厳しいものがあります。経済産業省の「未来人材ビジョン」によると、日本は、世界でも有数の「企業は人に投資せず、個人も学ばない国」という事実が浮き彫りになりました。

社員教育を軽視するのは、これまでずっと、社員を「頭脳」ではなく「手足」と考えてきた文化によるものと考えることができます。

トップダウン型の経営をする会社に多いのですが、「決めるのはリーダー(頭脳)。実行は社員(手足)。だから勉強はリーダーがすればいい。社員には不要」という社長がいまだにいます。

社員に対し、組織に尽くすことを求める「逆サーヴァント」スタイルですが、権力格差が比較的大きい日本には向いているのかもしれませんね。

僕の周りの経営者は、社員教育に力を入れている方が非常に多く、中には、美術館の鑑賞といった、すぐには成果の出ない素養に力を入れている方もいます。学びを押し付けるのではなく、サーヴァントのように裏方で支えています。

今後、さらに時代がVUCA化すれば、逆サーヴァントリーダーがトップを張る企業との間には歴然とした差が出るでしょう。


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