みんな不満に思っている「相対評価」は何が問題なのか?

評価制度は多くの経営者の関心事だと思います。
関心が深い理由は、ほとんどの企業で上手く運営できていないからだと思います。特に「相対評価」に手こずっている企業が多い。

僕は、評価制度は大切だと考えていますが「相対評価」に関しては疑問を持っています。

相対評価は、S・A・B・C・Dといったランクで社員を評価します。S評価は全体の5%、A評価は10%、Bは40%などと分布を決め、賞与などの原資の分配に差をつけます。
当然、競争原理が働きます。

そもそも仕組みが、人と組織の理に適っていないと考えています。
具体的には「望みの統合」という、欠くことのできない要件を阻害します。

「望みの統合」について改めて確認しますと、「経営者が望むことを、どれだけの人が同じように望んでくれているか?」を指す概念です。
社長が望むことを、もし社員さんが望んでいなければ、自発的に動くはずはなく、アメとムチによるコントロールが必要になります。しかし、外部からのコントロールは、自発性と創造性を毀損することが数々の研究で明らかになっています。
コストも労力もかけ、組織をダメにしてしまうということになるのです。

社長が望むビジョンを、社員が同じように望めば、言われなくても自発的に動きます。社員の家族も望めば、働きやすい環境づくりに貢献してくれるでしょう。顧客も望めば、囲い込みなどしなくても居続けてくれますし、良い口コミを拡げてくれるでしょう。

望みの統合は、ビジネスにとって、最も重要な初期設定なのです。

ところが、望みが分離していることが多い。
初期設定が間違っていると、望まない人を無理やり動かすような、力学的に非合理な経営になります。

事例を挙げれば、賃金がその代表です。社長は人件費を抑えたいと考えているが、社員はたくさん欲しいと願っているという相反が起きやすい。

能力の発揮に関しても、社長は、すべての社員に、持てる力を十分に発揮して欲しいと願っているのに、社員はそうは望んでいないことがあります。
その原因が「相対評価」です。

仲間が自分より良い成績を取ると、相対的に自分の評価が下る可能性があります。仲間がヘマをすると自分の評価が上がる可能性があります。
助け合いや学び合い、三人寄れば文殊の知恵が破壊され、結果的に組織は弱体化し、誰も得をしないという不条理が起きる可能性があるのです。

冒頭に「評価制度は大切だと考えている」と書いた理由も説明します。
そもそも評価とは何のためにあるのでしょうか?
「人と組織が育つため」という未来志向の理由以外にないと考えています。理想の組織に近づくために、現在の状態を知り、理想とのギャップを確認し、1人1人がギャップを埋めるための課題を持つためです。

しかし、実際は「過去の精算」になっている企業が多い。

「悪い評価を受けた者は”次には頑張ろう”という気持ちになるのでは?」と思うかもしれませんが、そうなるとは限りません。
リーダーの観えないところでチームに貢献した人(すごく多い)は、正当に評価されず腐ってしまいますし、活躍しなかった人は「低い評価を受けた=罰を受けてチャラになった」と悪い精算をしがちなのです。

「望みの統合」という視点に立ち、メンバー全員が、組織全体の成果と、仲間の成長を望むような環境設定を行うことが大切です。

とは言っても、急には相対評価をやめられないという事情もあると思います。その場合、徐々に相対評価のウェイトを下げていく方法をお勧めしています。

業績(売上総利益)から賞与の総額を決め、それを「相対評価分」と「基本給の比例分」とに分け、相対評価分のウェイトを数カ年計画で下げるというソフトランディングな方法です。
「チームの共創力を高めるために、相対評価分のウェイトを下げる」という方向性を社員と共有することが大切です。

安全な方法ですので、是非、参考になさってください。

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