組織が生み出す結果は、メンバーの「関係の質」で決まる

「関係の質」が「結果の質」を決めるという考え方があります。
これは、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱する「組織の成功循環モデル」により世間に広がりましたが、理論うんぬんを抜きにしても、経験則で納得できるのではないでしょうか。

先日、それを痛感する出来事がありました。
僕が主宰する夢新聞ワークショップを、1年生を対象に、かれこれ10年ほど開催している中学校があります。

夢新聞とは、自分の夢が実現し、その活躍が、将来、新聞に載ったと仮定して、その記事を手作りするワークショップです。未来の日付を入れ、文章はすべて完了形で書きます。
夢が実現するまでのプロセスを、できるだけ詳細に書きます。

とにかく、自分の人生を自由に描いて欲しいという思いで行っていますが、同時に、これからを生きる上で「最も汎用性が高い能力」を知って欲しいという狙いもあります。

その能力とは「共創力」です。
この世界の論理は弱肉強食ではなく「適者生存」です。環境の変化に適応した者が生き残ります。
適応するためには「たくさん試し、上手くいく方法を残す」という方法が最も有効です。
それを1人でやるのは非常に難しい。そこで、人類は、チームを形成して行うという戦略を編み出したのです。
この戦略を上手に行っている種の1つが蜂です。蜂は、蜜を探す時に、仲間が四方八方に散り、蜜を発見した蜂が「八の字ダンス」を踊り、仲間に報せます。
組織的に「たくさん試し、上手くいく方法を残す(探す)」ということをやっているのです。

夢新聞ワークショップワークショップでは、子どもたちにミッションを与えます。

「85分の制限時間以内に、クラス全員が1人残らず夢新聞を完成させる」

やり方はすべて任せますが、講師も担任も、大人は一切、手助けをせずに、すべてを仲間との共創で取り組んでもらいます。

ミッション達成のコツは3つ。

1、達成のためのアイデアをたくさん出すこと。
2、困っている仲間を早く助けること。
3、自分が困ったら、早く仲間に助けを求めること。

これまでずっと入学直後の4月に開催していたのが、3年前から7月の開催に変わりました。年間行事の都合ということですが、開催時期の変更から、関係の質が結果の質に与える影響の大きさを知ることになったのです。

入学直後の4月は、親密度が浅いので「突っ込んだ話」ができません。
組織が高いパフォーマンスを発揮する時は、深い対話が必要です。困っている人を放置していたら、「これじゃダメ」と問題を提起すること。忖度なく自分の意見を言うこと。仲間の意見に真摯に耳を傾けること。

4月には関係性が浅いため、明らかに表面的な対話しかできてませんでした。ところが7月には、仲間に注意を与えるなど、深い対話ができるようになっていたのです。

その結果、ミッション達成率はおよそ3倍に跳ね上がりました。

「関係の質」が良くなると、対話が深まり「思考の質」が向上します。思考の質が「行動の質」を高め、最終的に「結果の質」に繋がります。そして、良い結果を出せた自分たちに誇りを持ち、仲間に感謝するので、さらに「関係の質」を高めるという好循環を呼びます。

夢新聞の開催時期が変わったという偶然から、「組織の成功循環モデル」の効力を目の当たりにすることができたのです。


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