中小企業が経営の流行に乗っていはいけないワケ

経営の世界には、ファッション業界と同じくらい、多様な流行があります。
ちょっと前では「ワン・オン・ワンマーケティング」「CRM」などかがありましたし、最近では「ジョブ型雇用」「リスキリング」など、ファッション業界に負けていませんね。

しかし、それらの多くは大企業で生まれたもので、中小企業の経営には合わないものもあります。中には、中小企業が決して乗ってはいけないトレンドもあります。
大企業と中小企業では、商売の土俵が違うので、必要なノウハウも変わるからです。

大企業では、スケールメリットといって「たくさん作ると安くなる」という法則を活かした経営を志向します。
世界的に有名なスター企業は大企業に多く、その経営手法に注目が集まるのは自然なことですが、その中には中小企業には向いていないものも多いのです。

大量生産のトレンドを変えた風雲児の1社に、ファストファッションの「ZARA」があります。
これまで、アパレル業界は大量生産するために、1年以上も前からトレンドを予測し企画を立て、生地の手配から製造計画までを綿密に行ってきました。
トレンドが外れた場合は在庫を抱えることになり、だからクリアランスセールなるものが慣習となったわけです。

こうした手法が2000年代に入りリスクを高めることになります。流行の変化が異様に早くなり、トレンドを外すことが多くなったからです。

上の図は、ヒット商品の寿命が短命化していることを示る厚労省の資料ですが、最近ではインフルエンサーがSNSで投稿すると、トレンドが急激に変わりますので、ますますリスクは高まります。
しかし、リスクとは、何もネガティブなものだけではなくチャンスでもあります。

ZARAは「たくさんつくる」を止め、少量生産に踏み出します。トレンドの変化をキャッチしたデザイナーが企画をスタートしてから1ヶ月以内には店頭に並ぶというスピード感です。
当然、大量生産はできないため、製品1個あたりの原価は高くなりますが、在庫リスクが減りますし、何よりもトレンド最先端という、顧客からの信頼を得ることになります。

変化に強くなる最も有効な方法は「自ら変化をつくり出す」ということです。

すると必然的に…

「大量に作らない」
「綿密な計画を立てない」
「現場で意思決定できるようにする」
「ピラミッド型の組織にしない」

といった経営になりますが、これらは中小企業にとって、いや、中小企業だからこそ参考にできるのではないでしょうか?

経営の流行は、それで金儲けがしたいコンサルタントが次から次へと発案しますが、それらがどんな現場で生まれたものかを見極める目が必要だと考えるのです。
中小企業にとって最大の利点である「小回り」を際立たせるものに集中すべきではないかと思うのです。


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