最低賃金1500円時代を生き抜く「賃上げの実務」について

この2年間で、賃上げが原因で倒産した企業が急増していることをご存知でしょうか。
昨今の賃上げムードの中にあり、賃上げをしないと雇用に悪影響が出るという理由から、業績に関係なく賃上げをした結果です。

僕は、2年前…2022年の3月5日のブログで、このことを懸念するブログ記事を書いています。

記事中で「最悪のシナリオ」としたものが現実となっています。

加え、つい先日、中央最低賃金審議会は「2030年までに最低賃金を1500円の大台に乗せる」という政府の方針を受け、来年度(2024年度)の賃上げ目標を「昨年以上」と設定しました。

同時に、政府は終身雇用や年功序列などの日本的雇用習慣を見直す方針も出しています。

これが何を意味するのでしょうか?
事実上、「潰れる企業は潰れてください。その代わり、再就職しやすい社会にします」ということになります。
雇用の流動性が高め、賃上げを実現したスウェーデンをモデルにしているのだと思います。

このトレンドは、財務基盤が弱い中小企業にとっては死活問題です。

政府が賃上げを推進し、社員からも賃上げを期待される…しかし、賃上げを裏付ける業績は社長が1人で頭を悩ませる…そんなケースが急増すると懸念しています。

「賃上げは社長の仕事」という観念を変える必要があると考えています。
賃上げのために必要な業績を、確かな根拠をもとに設計する制度と、みんなで力を合わせ実現する文化をつくることが欠かせません。

必要な業績とは、具体的には「売上総利益」です。

「ちゃんとした根拠」とは次のようなものです。
売上総利益1億円。人件費5000万円の企業があるとします。この2つの数字から「稼ぎ倍率」という指標が出ます。
「人件費の何倍、売上総利益を稼いでいるか?」を意味し、事例の場合「2倍」となります。

この会社が500万円の賃上げを目論んだたとします。すると、総額人件費は5500万円になります。人件費の2倍稼げば実現できるわけですので、売上総利益の目標は1億1000万円ということになります。

そして、晴れて目標が実現し、さらに経常利益も増えたとします。
仮に、経常利益が昨年よりも900万円増えたとすると、ここから社員の決算賞与が出ます。
分配の方法に決まりはありませんが、社員と会社と株主で3分割という慣例を使えば、社員は、総額で300万円の決算賞与を手にします。

この方式で設定した業績目標は、これまでと大きく違う特徴があります。
それは…

「社員が、目標を自分事にする」

という特徴です。

人は自分事になった時に意識と行動が変わります。
意識が変わった時に、「みんなで力を合わせ、いい会社をつくろう」と、チーム作りの機運を作りやすくなります。

つまり、賃上げムードを企業力向上の追い風にすることができるのです。
今後の経営における基本的なリテラシーだと考えています。

※今日の記事の内容を、実際の体験で学ぶセミナーを開催します。
①賃上げ目標を決める。
②賃金制度を使い必要な業績を算出する。
③チーム作りを行う。
④チームのパフォーマンスが上がる。
⑤成果が上がり、賃金が上がる。

制度を学ぶとともに、ゲームを通じ「繁栄の好循環」を身体感覚で学びます。
社長はもちろんですが、社員さんが参加すると「賃上げのために何をすべきか」を理解してもらえると思います。
年内最終開催となりますので、ご検討ください。