優れた社長ほど「社長っぽくない」という不思議を考察する
僕は、以前に、ひょんなことから婚活セミナーの企画に関わったことがあります。
あるセミナーの時に、主催者の女性が「常連受講者」の男性に厳しいひとことを放ちました。
「あなたは婚活ばかりしているから魅力がないの」
「あちゃ〜 身も蓋もないことを…」と思ったのですが、その男性はよほど魂に響いたのか、真剣な眼差しで彼女の話を聞いていました。
彼女は、その男性に、「今、無いものばかり追いかけていないで、何かに夢中になるといいよ」とアドバイスしました。
なぜ、記事の冒頭でこんな思い出話を書いたのかというと、同様のことが経営、そして人生にも言えると思ったからです。
彼女の言葉は僕の心の急所に突き刺さりました。
その頃、僕は「社員がついてきてくれない」と悩んでいました。その男性が、女性を惹きつけることばかり考えていたのと同じように、僕も、いかに求心力を獲得するか、ばかり考えていたからです。
僕にとって、その男性は反面教師であり、自分を映す鏡でした。
男性に初めて会った時の第一印象は、「なんて不自然な振る舞いをする人なのだろう」です。
男性ファッション雑誌の「いい男マニュアル」を読みながら行動しているような不自然さがあり、魅力的な男性を演じ過ぎて、すごく不自然で近寄りがたいのです。僕は「もっと素の自分でいればいいのに」と思いました。
翻って、僕はどうだったのか?
求心力が欲しがために、立派な社長を演じることに苦心していました。「贅沢はぜずに、車は中古のオデッセイ」「休日も遊ばずに読書をする」(本当は読書なんてしなくて、昼から飲んでいたが 笑)「朝、誰よりも早く出社して掃除をする」
地域の方からは「経営者のお手本だ」と称賛され、いい気分になっていました。
しかし、心の奥底には、素の自分を抑圧したことによる真っ黒いシミがこびり付いていました。
なぜ、そんな嘘をついてまで立派な社長を演じたかというと、子どもの頃から父に「経営者はナメられたらおしまい」と聞き育ってきたことにより、「社長は立派でなくてはならぬ。強くあらねばならぬ」という固定観念ができていたからです。
婚活の彼を見た時に、僕は自分を客観視することができました。
彼が、自分の弱い部分を隠すために、いい男を演じていたのと同じように、僕も「ナメられたらどうしよう」という恐れから身を守るために「仮面」と「鎧」をまとって生きていることに気づいたのです。
僕は、固定観念に疑いを持つようになりました。そして、いつしか、それが単なる思い込みであることに気付きました。
極端な変化ですが、車はBMWのスポーツカーに乗り換え、昼間から飲んだくれていることを正直に伝え、掃除もやりたくない時はやらなくなりました。
「軽蔑されたらどうしよう」という恐れがなかったわけではありませんが、心のシミを抱えながら生きるよりもマシだと思ったのです。
結果、どうなったか?
軽蔑されるどころか、社員も素の自分をさらけ出せるようになり、職場の雰囲気が軽くなりました。
いわゆる「心理的安全性」が高まったのです。
あの日、女性コーディネーターが言った「あなたは婚活ばかりしているから魅力がないの」という言葉が、僕には「あなたは経営者ばかりやっているから魅力がないの」と解釈できたのです。
それに気付いた時に、優秀な社長ほど「社長っぽくない」という不思議の謎が解けたのです。
経営者である前に、1人の人間でいて良いと思うのです。
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