「たくさん作って、たくさん売る」が終わり中小企業の時代が来る

日本が世界に誇る自動車産業がおかしなことになっています。
昨年は中古車大手の不祥事が世間を騒がせましたし、今年に入ってからはメーカの不正が相次ぎました。

なぜこのようなことが起きるのでしょうか?
様々な専門家が分析していますが、今日の記事では「原因の深層部」にメスを入れたいと思います。

原因の深層部とは「たくさん作って、たくさん売る」の限界です。

私たち人類は、有史以前から物質的な欠乏と戦ってきました。常に、基本的な衣食住への不満を抱えており、ビジネスがその解決に一躍を担いました。特に、産業革命以降、飛躍的な改善を遂げました。
物質的な欠乏は万人にとっての課題ですから、たくさん作ることができる大きな企業が、スケールメリットを活かし競争力をつけました。

特に日本企業は「リードタイム短縮」を武器に、世界的に優位なポジションを獲得しました。
※リードタイムとは、「工程に着手してから全ての工程が完成するまでの所要期間」を指します。

市場にはモノを欲しがっている人で溢れているので、リードタイムが短ければ、市場にモノをどんどん押し込むことができます。

今回(2024年6月)に発覚した自動車メーカーの不正は「型式指定の申請」といって、「大量生産していいよ」という認可に関するものでした。
また、トヨタ自動車の豊田章男会長は謝罪会見で、不正の原因として「開発リードタイム短縮」に触れました。今回の不正は、どんどん開発して、大量に市場に押し込むことに起因すると考えることができます。

今、自動車産業で起きている不正は「市場が成熟し、もうこれ以上押し込めないのに、押し込もうとする」ことで起きているのではないでしょうか?

これから益々、世界規模で市場は成熟しますし、経済成長率も人口成長率も鈍化します。スケールメリットを武器に戦う大企業は、伸びない時代に、株主からの「もっと」の要求を受けるのですから大変ですね。

話は変わりますが、従兄弟が「変な軽自動車」を買いました。イギリスの自動車メーカー「ケータハム」です。
日本では一部の愛好家以外には知られていませんが、ユニークな商いをしており、こんな軽自動車も作っています。

従兄弟に聞いて驚いたのですが、お値段が高級外国車と同等なのです。それでも、とても人気らしく、数年待ちの行列状態だそうです。

これこそが中小企業が目指す商いではないでしょうか。
十分にモノに満たされた生活者は、「欲しいものがない」と言いながら「もっと人生を愉しみたい」と願っています。
その願いは「万人が欲するもの」ではありませんから、大企業では応えることは難しく、中小企業の出番だと思うのです。

「伸びない時代に、さらに伸ばす」という圧力はなく、社員さんはノビノビと働けますし、何よりも、顧客が熱望するものを作ったり売ったりできるのは、この上ない働き甲斐を生むと思います。

自動車産業の不正を反面教師にして、時代の変遷の本質を観れば、次の時代のチャンスが観えてくると思います。

この話は、メーカーに限ったことではありませんし、大手が作ったものを扱う中小企業にも言えると考えています。


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