チームワークを改善したければ「チーム内に敗者を出さない」を合言葉にせよ

チームスポーツの中でも、ラグビーは人数が15人もいるため、非常に高度なチームワークが求められると言います。
そんなラグビー界から出た書籍「ラグビー流人材成長」(日経BPSムック)を友人から紹介されました。

書籍の中で、チームワーク形成の要件として「チーム内に敗者を出さない」ということが書かれていました。
このことを職場の色んな場面で実践すれば、チームワークは確実に良くなると思ったのです。

僕は、自分の経験からも、様々な企業に関わる中からも、チームワークが良い組織には3つの特徴があることを知りました。

1、困っている仲間を支援する。
2、自分が困っていたら仲間に支援を求める。
3、困っている人が「見える化」されている。

この状態を「1人も見捨てない」と僕は呼んでいますが、ラグビーの著書で言えば「チーム内に敗者を出さない」ということになります。

このこと、は概念を説明するよりも、実践事例を紹介した方が分かりやすいと思います。
先日、社内研修に入った企業さんでの出来事です。
研修ではグループ対話を通じ気付きと学びを深めるとともに、グループで話し合ったことを全体に発表し学び合いを促します。

毎回、ここで問題に直面します。発表者が喋っている時に、聞く側がおしゃべりをしていたり、発表者を見ずに下を向いているのです。
発表者はとても話しづらい。

このままでは、発表者は敗者になってしまいます。そんな時、僕は「チーム内に敗者を出さない」ということを説明した上で、「優れた発表者をつくるのは聞く側だ」ということを伝えます。
先日の企業では、説明の後に、僕が「では、発表者を最高の発表者にしてください」と言ったら、一斉に全員が大きな拍手を送りました。

研修に参加されたある女性は「自分も敗者にしない」と誓いを立てました。その方は、仕事が立て込んでも、仲間に助けを求めず、1人で抱え込む癖がありました。
研修では、その癖がどのように醸成されたかを分析しました。その結果、自分の中に「簡単に他人に頼ってはいけない」という観念があることに気付きました。その観念は、「どうやら母親との関係で作られたと」いうことも分かりました。母親から自助努力を求められ、それができた時には褒められますが、途中でくじけると厳しく叱責されたと言います。
その観念が心にブレーキをかけます。自分自身が助けを求めないばかりか、他者に助けを求める仲間を許せなくなり、母親と同じように叱責してきたと言います。
その女性は、自分も仲間も敗者にしないという深い気付きを得たのです。

仕組みで対応している企業もあります。あるケーキ店では、自分の仕事の滞りが一定を超えたら、天井から吊り下げられている紐に、黄色いカードをつけるというルールがあります。カードがつけられたら、前の工程の人は自分の手を止めて助けに入ります。
(前の工程が手を休めず、仕事を流すと滞りはさらに悪化するから)
仕組みとして敗者を作らないようにしているのです。

チームワークは、とかく精神論で語られることが多いのですが、「敗者を作らない」という行動学として捉えると、社内には改善ポイントが多く見つかると思います。


6月26日(水)に、「指示ゼロ経営説明会」を開催します。
指示ゼロ経営の基礎中の基礎を学ぶことができます。
今回の特別テーマは「正しい賃上げの実務」です。無策な賃上げは危険です。賃上げムードを企業力向上の追い風にする基礎知見を学びます。