「これが学びたい」と提案してくる社員を育てることが社員教育の真髄
最近、娘が夜遅くまで英語の勉強をしています。1日の勤めが終わり、夕食を食べた後に学ぶのだから相当な意欲です。
理由を聞くと「海外旅行に行く」とのこと。
人は、目的があると主体的に学習するのだなと思ったのですが、同時に、「はたして企業で、これができているだろうか?」という疑問も抱いたのです。
「これ」とは、「学習課題の設定」です。
リーダーが熱心に教育したり、部下を研修に派遣したりしても、社員さんが主体的に学ばないとしたら設定が不十分であることを疑うべきでしょう。
僕が講師を務める、中堅社員を対象に行っている公開セミナーでは、学習課題の設定を、上司の手を借りて行っています。具体的には、上司から部下へ、期待や応援の気持ちを記した「行ってらっしゃいカード」というものを渡してもらうようにしています。
しかも「カードを書く際の注意点」という解説動画までつけているという徹底ぶりです。
そこまでやる理由は、とりも直さず、「設定」が学習効果に及ぼす影響力を痛感しているからです。
解説動画をつけるようになったきっかけは、カードに書かれる内容が、応援でも期待でもなく「不満」と「要求」ばかりだったことがあったからです。
部下を研修に派遣するということは、背景に「もっと成長して欲しい」という願いがあるわけです。願いは不満の裏返しであり、常に表裏一体で存在します。要するに「未熟だから学んでくれなければ困る」ということです。
ある時に、不満の怨念に取り憑かれたようなカードを目にしました。「○○さんは営業パーソンなのだから、もっと成果に対する執念を持ってもらわないと困る」などと書かれた、怨嗟が渦巻くカードです。
普通に考えれば逆効果であることは自明なのですが、当の本人(上司)は気づいていません。
解説動画で伝えている、カード作成のアドバイスの要点は、
「会社の未来に、成長したあなたが必要だから学んで欲しい」
というシンプルかつ、率直なものです。
娘の例を引けば、「海外旅行に行く」という未来のために「英語を喋れるように成長する」という構図と同じものを設定するということです。
メッセージのポイントは「会社の未来」…つまりビジョン設定の巧拙です。
図解をすると次のようになります。
ビジョンを設定すると、現状との差異が浮き彫りになります。その差異を埋めるために「アイデア」を考えるわけですが、部下がビジョンを望んでいれば、アイデアを実行するために必要な知識や技術は、部下の方から「これが学びたい」と提案してきます。
このような状態をつくれば、社員教育の8割は終了です。
後は、「こういう研修があるんだけど」と提案するだけです。
社員教育の真髄は、「何を教えるか?」よりも、自ら「これが学びたい」と提案してくる社員を育てることだと考えるのです。
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