退職代行サービスの活況から「簡単に辞めることは悪か善か?」を考える

「GW明けに退職代行サービス業が大賑わい」というネットニュースを見ました。
退職代行サービスとは、会社を辞めたい人が、代行業者に退職手続きを丸投げできるサービスで、ここ数年、利用者が急増しているそうです。
Yahooニュースのコメント欄には賛否両論が踊っていましたが、「否」の主張は大きく次の2つにまとめることができます。

「簡単に辞めすぎ」
「自分で手続きをすべき」

いずれも日本人の価値観を反映した意見だと思います。
日本人は、「一所懸命」「石の上にも三年」というように、1つのことに貫徹することを美意識とします。
「国際労働データブック」の勤続年数別の労働構成比率を見ると、日本は1年未満が8%で、世界的に見ても長く勤める傾向が強いことが分かります。ちなみにアメリカは26%、イギリスは17%、ドイツ・フランスは14%です。

また、「自分の始末は自分で」を潔さとする文化も根付いています。

こうした文化的背景を考えると、退職代行サービスの利用に対し「否」の意見が多いのも頷けますね。

「自分で手続きをすべき」という意見に対しては、僕も賛同します。
もちろん、退職願いに対し理不尽な仕打ちをするブラック企業では例外ですが、「単に面倒くさいから」という理由で代行サービスを使うとすれば、楽をした分以上の代償を払うことになるかもしれません。

というのも、人は、明確にケリを付けないと次に進むことができないからです。失恋がその典型で、前の恋を終わらせないと次の恋は始められません。終焉は感情的なインパクトが大きいほど効果があります。
「別れた彼女に新しい彼氏ができた」くらいのインパクトがあった方が諦めがつくというものです。
「諦め」は「明らかにする」を語源とするという説がありますが、終わらせることが、次の道を明らかにするのだと思います。

さて、今日の本題は、もう1つの「否」の理由…「そもそも簡単に辞めすぎ」についてです。
確かに「石の上にも三年」は本当だと思いますが、自分の性質に合っていないのであれば、早く違う場に行った方が良いという考え方も一理あります。

「磨けば光るものを磨く」ということです。

吉本興業が主催する「M1グランプリ」の立ち上げに、事実上のプロデューサーとして関わった島田紳助さんは、M1グランプリの意義を、スターダムへの登竜門としてだけではなく「諦めの場」として捉えていたと言います。
要するに、「受賞できなければ、早く次の世界に行く」ということです。諦めきれずにズルズルと続けると、年を取ってしまい次に進む道が絶たれる可能性があります。
厳しいようですが、とても深い愛があるのです。

IPS細胞の研究でノーベル賞を受賞した山中伸弥さんは、キャリアのスタートは整形外科研修医でした。しかし、あまりにも手術が苦手であったため2年で辞めてしまいます。その後、薬理学の世界に入門しますが、ここでも挫折。しかし、この時に「ES細胞」に出会い、この分野に集中することを決意し、IPS細胞の発見に至りました。

「磨けば光るものを磨く」と言いましたが、自分にとっての「光るもの」は簡単には分かりません。最も有効な発見法は「色々やってみる」ということではないでしょうか?

これを組織マネジメントに応用するなら、適材適所を見つける有効な方法は「色んな業務に携わってみる」ということだと思います。

「色々と試し、磨けば光る分野を見つけ、石の上にも三年」といったところでしょうか。


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