使う言葉を「する必要がある」から「したい」に変えた時に拓ける世界
先日、ある経営者から、「指示ゼロ経営の導入に成功する企業と、そうでない企業の違いは何ですか?」と質問を受けました。
指示ゼロ経営に限ったことではありませんが、そこには根本的な違いがあると考えています。しかも、それは以前よりも今、そしてこれからの時代において欠かせない要件です。
結論から言うと、「そこに熱い願望があるか?」ということになります。
ここで言う願望とは、単なる金儲けの欲望ではなく、「お客様に喜ばれたい」「社会に新しい価値を提供したい」といった、損得勘定を超えた「想い」を指します。
「いきなり精神論かよ?」と思われるかもしれませんが、今の時代ほど「願望」が必要な時代はないと考えています。
このことをエスカレーターで例えると分かりやすいと思います。
日本は長いこと経済成長期が続いたことで、さしたる願望を持たずとも経営ができました。いわば「行き先は分からないが、登りのエスカレーターに乗っていて調子がいい」という状態だった。
ところが、エスカレーターは止まってしまいました。
すると、金儲けの願望しか持っていない人は「他の登りエスカレーターはないかな?」と「正解」を探します。あるいは、「何が流行るかな?」と未来予測をします。しかし成熟社会では正解なんてないし、ゆえに未来予測なんて不可能です。
行き先(願望)の設定から始まり、何から何まで自分たちで組み立てなければならなくなったのです。そのエスカレーターは「勝手に動いてくれる」という甘いものではなくメンバーの総力を結集しないと動きません。しかもアップダウンが激しいとくる。
そんなエスカレーターに乗り続ける動機があるとしたら「願望」以外にありません。
経済合理性だけの動機だったら、他のエスカレーターへの乗り換えに意識が向くでしょう。しかし、先述した通り、そんな都合の良いエスカレーターはほとんどありません。隣の青い芝を探して右往左往するだけでしょう。
願望があるかどうかは経営計画やリーダーの言葉にハッキリと表れます。
願望がないと、「◯◯する必要がある」「◯◯しなければならない」といった、誰の言葉なのか分からない文言が踊ります。あるいは、数値目標と段取りだけの冷たいものになる。
対し、願望が込められた計画書には「◯◯を実現したい」「◯◯が私の願いだ」と、主語が明確です。
どちらが求心力を生むかは自明ですよね。
組織は、願望が共有されると自律性を発揮します。行き先(願望)があれば、「行き方」はメンバーが主体的に考えてくれるのです。
「純粋な願望があるか?」…これが、「指示ゼロ経営の導入に成功する企業と、そうでない企業の違いは何か?」の問いに対する僕の回答であり「願い」でもあります。
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