寄らば大樹の陰の時代は終わった。社員の個性に会社が頼る時代になる。
「個性的で優秀な社員がいると、辞められたら困る」「いち社員が影響力を持つのは脅威だ」という経営者がいますが、もう、その古い考えは捨てる時期に来ていると思います。
確か1990年代年後半だったと思いますが、「仕事と人を分離する」という考え方が流行りました。社員の能力に依存せず、誰がやっても同じクオリティを担保するという意味です。当時は「なるほど!素晴らしい」と思ったのですが、今では前時代の思考だと思っています。
現代の経営に最も重要な資産は「創造性」ですが、創造性は「仕事や組織を、どれだけ自分事にしているか」…エンゲージメントで決まります。エンゲージメントは、自分が、組織にとって「替えの効かない存在」として認められることで高まりますから、「仕事と人を分離する」という考え方は時代の流れに逆行しています。
「個」の時代と言われて久しいわけですが、しなやかな強さを持つ組織体にしたければ、個性豊かな「個」の集合体にすべきだと考えています。
話は40年も前にタイムスリップしますが、僕が小学生の頃は、世の中には粗悪品が出回っていました。
買って家に帰って箱を開けたら、すでに壊れていた、なんて事もありましたね。徳島県で「学校用タブレット大量故障事件」が起きましたが、あのようなことが頻発した時代です。
だからこそ、有名ブランドの商品には抜群の安心感があったわけです。
品質管理のレベルUPとともに、新聞やテレビで大々的に宣伝し、生活者から「テレビでCMするほどの会社だったら大丈夫」という安心感を勝ち取りました。
安定を最優先した時代だったので、不安定なものを嫌い、社員の個性よりも組織のシステムに依拠する経営が進められました。
再び現代にタイムスリップします。今は、メイドインジャパンで粗悪品を見つける方が難しいほど品質は進歩しました。
加え、生活者は、一通りのモノに満たされています。
すると、品質以外の点で「誰から買うか?」という課題が生まれます。
商品・サービスの開発や事業に対する思いといった「ストーリー」が重視されるようになりました。
それを受けて、2000年代に入り、メディアの最前線に出たり、自らSNSで発信し、「社会資本」をつくる経営者が登場します。
ソフトバンクや楽天の社長は大多数の人が知っていますが、朝日新聞やNTT、パナソニックの社長を知っている人は少ない。
価値観の新旧が入り混じった時代だと思います。
今後は、社長オンリーの発信が、社員に分散されていくと考えます。色んな人が発信した方が、企業の全体像が立体的に見えるからです。
その先駆者は「東進ハイスクール」だと思います。同スクールの登場以前は、「代々木ゼミナールなら安心」という「組織への信頼」に依存してきましたが、同スクールでは、講師陣がズラッと並び、それぞれがメディアで発信し、「個」への信頼の集合体で組織の社会資本を形成しました。
個の発信にはリスクやプライバシーの問題が伴いますし、「社員の発信に一貫性がない」ということがないように文化の醸成が必須になりますが、避けては通れない道だと考えています。
最後に、「社会資本の蓄積で信じられないことが起きる」ということが分かる、当社の事例を紹介したいと思います。
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