出会いの季節だからこそ、あえて「別れる日」を考える
新年度が始まった今だからこそ、あえて「終わる」ということを考えたいと思います。
終わりのない映画、小説、漫画、学校生活なんてものは存在しないわけですが、存在したとしても魅力は感じませんよね。
終りがあるから過程に生命が吹き込まれるのだと思います。
「有終の美」という思想が生まれたのは、生命には死があるからだと思います。
僕は死んだことがないので確かなことは言えませんが、死を宣告されことで、残された時間の密度を高め「有終の美」を飾った方は、身近にも何人もいます。
「擬似的な死」という意味では、僕にも経験があります。僕は小学1年生から6年生までスイミングスクールに通っていました。喘息持ちだったことで親に強制的に入れられたのですが、嫌々通っていたというのが正直なところです。
小学校卒業間近の3月、最後の教室は一生忘れることはないでしょう。
あれほど嫌々だったのに、その日だけは「このままずっと泳ぎ続けたい」と、一心不乱で泳いだのです。
普段、とても長く感じた60分間が、信じられないくらいあっという間に過ぎたことを今でも覚えています。
コーチの「終了ー!」の声を聞いた時に、僕は清々しい心持ちで天井を見つめていました。
僕がスイミングスクールで学んだ最も大切なことは、水泳の技術ではなく「終わりの力」でした。
僕が尊敬する教員に、加藤宏忠先生がいます。学級崩壊に陥った僕の娘のクラスを救ってくれた恩師です。
4年生の新学期が始まった直後、事情により、突然、新任の担任が退職してしまいました。色んな先生が代わる代わるお世話をしてくれたのですが、クラス替えの直後ということもあり、クラスは不和を起こし1年間に渡り崩壊状態が続きました。
5年生の時に赴任したのが加藤先生です。
赴任して最初にやったことは「最後の日」の決意表明です。
「人は出会った以上、必ず別れる時が来る。別れる時に、どんな気持ちでいたいか?」…それを子どもたちと話し合ったのです。
その結果「”もっと一緒にいたい”と涙を流して別れたい」という思いに至りました。
その思いを込め、1枚の模造紙に全員の手形を押し決意表明とし、黒板の上に張り出しました。
「有終の美」に向かい加藤学級がスタートしたのです。
5年生の臨海学習で、ある男の子が風邪で欠席してしまいました。
数週間後の授業参観で、加藤先生は旅の様子を15分ほどの映像にして保護者に見せました。
参加できなかった、その子とお母さんは、それを見るのは辛いと思います。
ところが、映像は予想を超えるものでした。
欠席した男子を中心とした物語だったのです。
臨海学習の様子を伝えながら、みんながその子を思う物語。映像の最後は、クラス全員の「来年の修学旅行は一緒に行こうぜ」というメッセージで締めくくられます。
涙を流すお母さんを見ながら、僕は、有終の美への道程を感じたのです。
卒業式の日
「最後の授業」が始まりました。
「人を愛することは簡単だけど、愛される人になるのは難しい。みんなには『愛される人』になってほしい。中学に入ってからも、愛される人になるようにがんばって欲しい」
いつもの見慣れた風景
手形が押された模造紙
あの日の決意を叶えた子どもたちは、涙で顔がしわくちゃになっていました。
「以上をもって、加藤学級は終了です。」
本当に終わったんだな、手形が押された模造紙を眺めながら、僕はスイミングスクールの最後の教室を思い出したのです。
人は出会った以上、必ず別れる時がきます。
物事には必ず終わりがある。
始まりの季節だからこそ、終わりを考えることが大切ではないでしょうか。
加藤先生は、本当に素晴らしい教員です。
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