任せられることを損と考える人が、喜びを感じるようになる「上手な任せ方」
それは喜びか?
苦痛か?
任されること、自発的に動けることを喜びと感じる社員さんが多い組織もあれば、負担と感じる人が多い組織もあります。
ある企業では、社員さんが「こんな事までさせてもらっている」と、任されることを楽しんでいました。
他方、ある企業さんでは、「こんな事までやらされている」と不満を言っていました。
どちらの組織が繁栄するかは自明ですが、後者の考え方が理解できないわけではありません。
従来の考え方…「上司に言われたことはやる」という考え方が残っているのかもしれませんし「働くことは損」という価値観を持っているのかもしれません。
いずれにせよ、自発的に働く喜びに満ちた会社にしたいものです。
任されることが嬉しい→イキイキと働く→良い結果が出る→より任せられる…この好循環が生まれたら、組織は自律的に成長していくでしょう。
しかし、こういう企業も最初からそうだったとは限りません。後者のマネジメントスタイルからのスタートだったという起業も多くあります。
では、どのようにして仕事を愉しむ文化に変わっていったのでしょうか?
任せられることに喜びを感じる人を採用することがベストですが、既存社員が育つ方法として、僕が知る限り、2つのケースがあります。
1つは、急に社長が病気で倒れたといった、危機に直面したケースです。
大騒ぎになりますしストレスもかかりますが、社員は自立しますし共通の課題ができることでチームワークも良くなります。
もう1つは…
「関心があり、できる事から少しづつ、自分たちで」
というケースです。
僕が経営してきた会社では、このスタイルで育ちました。
例えば、日頃自分たちが使う仕事道具(ハサミや糊、ボールペンなど)の購入、または、お茶菓子の購入などを、予算だけ決めて「その範囲内でやり繰りしてね」とお任せするのです。
任せられたら、みんなで話し合い決めます。
普通は上司から与えられるものを、自分たちで決めることができる、これだけで楽しくなりますし、現場の事情に合った、良い買い物ができるようになります。
こうした取り組みから自律する愉しさを覚え、徐々にお任せする範囲を広げていくのです。
ただし、注意すべきは、「実力に見合ったことに挑戦してもらう」ということです。
フロー研究の第一人者である、ミハイ・チクセントミハイは、フロー(ゾーン)に入る要件として、取り組みの「難易度」と「実力」のバランスが大事だと述べています。
実力があるのに簡単すぎる課題しか与えられないと退屈になりますし、逆に、実力をはるかに超える課題を与えるとストレスになります。
最初は、実力に対し、少し簡単な課題をお任せし、育てながら難易度を上げていくのが理想ということです。
図解で言えば「リラックス」→「コントロール」→「フロー」です。
大学を卒業した3ヶ月後に、父の急逝により、僕の実力をはるかに超える社長という役割を引き継ぎました。ちなみに僕は、経営の「け」の字も知らない人間に、社員数50人のリーダーは務まるはずがありません。毎日、地獄のようなストレスを抱えながら生きていました。
僕の場合は、色んな方の支援により「強いストレス」→「覚醒」→「フロー」という手順で成長できたのだと思います。
指示ゼロ経営の基本に「人は参画した分だけ物事を自分事にする」という考え方があります。
1つ参画すると1つ自分事レベルが上がる…根気よく続けることでいつしか驚くような成長を遂げるはずです。
そして例のセリフ…
「こんな事までさせてもらっている」と言い、自分たちのあり方を誇りに思うようになると思います。
実力と難易度を勘案し、気長に育てること、これが一番重要だと思います。
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