人が育たない時、社員を「部品」として扱っていないか疑ってみる
僕は、「人材」という言葉に違和感を感じながら、この言葉を使っています。社員を「材料」…つまり部品のように捉えている印象を受けるからです。
この話をある経営者にしたら「そうじゃないの?」と真顔で言われ戸惑ったことがあります。
確かに、起業する時は、お金を調達し、そのお金で設備を買い、人を雇用して操業を始めます。「人、モノ、金、情報」の経営資源を組み合わせてお金を生む行為が経営だとすれば、部品と捉えるのは自然なことだと思います。
でも、僕が社員の立場だったら「あんたの野望のための部品じゃねえよ」と思いますし、使い倒され摩耗しないように身を守ることを最優先に考えると思います。
ここ10年ほどで定着した「早期退職制度」は、部品の入れ替え以外の何物でもありません。
採用活動も「より良い部品を見定め購入する」という意味合いで行いますし、人材育成も「部品を磨く」という発想で行われます。
私たちは、こうしたパラダイムの中で生きているので、それが当然だと思ってしまいますが、まったく違うパラダイムの「住人」たちがいます。
僕がホワイト企業大賞でご一緒している、ネッツトヨタ南国の横田 英毅相談役もその一人です。
以前に、同社にお邪魔した時に、採用担当の女性社員さんが、採用の心得をこうおっしゃいました。
「採用活動とは、こちらが一方的に自社に都合の良い人を選ぶのではなく、その人が自社で幸せに働けるか?を考え、そのマッチングを行うものです」
これが、新しいパラダイムの「住人」の採用に対する考え方です。
人材育成に関しても「住人」は「部品を磨く」という発想はしません。
僕の研修に社員さんを派遣してくださる、ある会社の社長は、研修前に社員さんに「期待のメッセージ」を伝えています。
そのメッセージの趣旨はいつも「あなたのキャリアのために」と、社員さんを主体にしたものです。
「会社の業績向上のために」というメッセージを伝えたくなりますが、180度違う視点で人材育成を行っているのです。
その理由をお聞きしたところ、シンプルで明快な理由を教えてくれました。
人生100年時代に突入するのに対し、企業の寿命は短命化を続けています。米国SP500構成企業の平均寿命は、1960年代には60年だったのが、今ではおよそ20年に短命化しています。
80歳まで働く時代が来ると言われていますが、そうなったら60年間は働かなければならず、平均すると3回は転職する時代になるということです。
同社では、そんな時代になることを視野に入れて研修を行っているわけですが、同社で働く社員さんは、結果的に転職を余儀なくされる事態に遭遇しない、つまりその会社の経営は盤石になると思います。
「人を大切にする経営」ということが盛んに言われますが、その意味が「部品として大切にする」のと「その人の人生を豊かにする」のとでは、まったく意味合いが違います。
最近、僕の周りに「人材」という言葉に違和感を覚える「住人」が増えており、もしかしたら、将来、「人材」に変わる言葉が生まれるかもしれないという期待を込めて今日のブログを書いたのです。
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