至上の経営者はお地蔵さんのような「存在力」を発揮している
以前に、指示ゼロ経営に成功した会社の視察見学会を企画した事があります。
社長だけでなく、社員さんのお話も聞いたのですが、そこでとても興味深い話が聞けたのです。
ある見学者が社員さんに質問しました。
「皆さん(社員さん)にとって、社長はどんな存在なんですか?」
すると、社員さんは真剣に考え込んでしまいました。
質問者が続けて「要らないんですか?」と聞くと、「いや、それはないです」と言う。
見学者たちの頭上に「?」がたくさん飛び交い、場が動かなくなってしまいました。
その時に、ある社員さんがこう話し始めました。
「いないと困ります。しかし、いるからと言って何か具体的な指導やアドバイスはないです。褒めることも叱ることもしません。何も影響力はないのですが、要らないわけではないのです。う〜ん、何で必要なんでしょうね?」
その社員さんが上手に説明できずに困っていたところ、別の社員さんが言いました。
「居ることに意味があるのではないでしょうか?」
とても素晴らしい会社、そしてリーダーだと思いました。
僕はリーダーには「影響力」と「存在力」があると考えています。
件の会社の場合、社長には影響力はたいしてない、しかし、いないと困るわけですから、存在力はあるのです。
僕はこの場に遭遇して、「かんてんぱぱ」で有名な伊那食品工業株式会社の創業者、塚越 寛会長を思い出しました。
とある商工会議所の方に聞いたのですが、塚越さんは社長時代、毎日のように現場を見て回るそうです。
「どう?」と声がけをして回るのですが、そこで具体的な業務の打ち合わせは起きないそうです。
大きな会社だから、社長と細かな打ち合わせをするわけがないのですが、それなら現場を見て回る必要もないわけです。
会長本人に聞いたわけではないので、僕の推測になりますが、「信頼して見守る」という重要な仕事をされているのだと思います。
それが存在力だと思います。
いわば、お地蔵さんみたいな存在です。
お地蔵さんは、前を通る人を等しく見守っています。
お地蔵さんを拝んでも具体的な影響力は与えてくれませんし、何もアドバイスはくれません。
拝む方は勝手に拝み、それで満足し元気になるわけです。
そこに存在し、たわいもない会話をするだけで場が良くなる、そんなリーダーがこの世にいます。
僕にもそんな存在がいます。
28年前に他界した父です。
いまだに僕は墓参りをする時に、父に仕事の報告をします。
夢の中で、一生懸命に自分の取り組んできたことを語ることもあります。
「新聞購読者減ったけど新しいビジネスを開発したんだ」
「書籍も出したんだ」
「企業研修もやっている」
夢の中の父は、いつも何も言わず笑顔で聴いてくれます。
朝、起きると僕はいつも心が満たされ、温かい気持ちになっているのです。
この境地には達するまでには一生かかるもので、無理してやるものではないと思いますが、いつか到達したい境地です。
先日、指示ゼロ経営を実践されている若手社長に、「社長の存在って何ですかね?」と聞かれて思ったことを今日のブログに書いたのでした。
それでは今日も素敵な1日をお過ごしください。
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