「物心ともに」の「心」の充実を経営の軸に置くと、新しい世界が拓ける

「物心ともに豊かになる」という表現があります。
経済的にも精神的にも豊かになることを目指そうということで、この思想を基に経営計画を立てる経営者は多くいます。
実際に、僕もこの文言が盛り込まれている経営計画書を多く見てきました。

しかし、その意味を具体的に示している経営者は少ないと感じています。
経済的な富は、数値で評価できるので分かりやすいのですが、「心の富」に関しては、目に見えないので示すのが難しいのだと思います。
人によっては、よく分からずに使っていることもあると思います。

しかし、それは、目指すものが決まっていない旅であり、迷走するのは必至です。
そして、とりあえずの拠り所である数値だけを扱う経営になります。

今の時代、それが心を蝕む原因になります。

今、ここにないもの(数値)のために、「今を生きる」という豊かさを失う。
幸福と連動していない、単なる経済活動の奴隷になる。
食うための手段として、しかたなく働く。

そもそも、私たちが満喫してきた経済成長は、モノが欠乏している上に、人口が増える時代によってもたらされた恩恵です。
より多く作り、より多く市場に流すという経営=数値を増やす経営が、社会構造とマッチしていました。

日本の人口は2008年をピークに減り続けています。GDPの成長率の伸び率は年々下がり続けています。


もう、物の豊かさを追い求める時代ではなく、だからこそ、「欲しい物がない」「無理して買わなくてもいい」と考える生活者が増えているのだと思います。

それでも成長を目指せば、社会も人間も壊れてしまいます。
例えるならば、20歳を過ぎてなお「身長を伸ばそうとする」行為です。過去の栄光を手放せずにいて、「なんで伸びないんだ」と悲観し、無理な方法で伸ばそうとする状態です。

人が、身体的成長の後に、精神的な充実のフェーズに入るように、企業も活動の目的を切り替える必要があると思うのです。

現代の生活者は「特に困っていることはないし、欲しい物がよく分からないけど、なんだか毎日が充実しない」という漠然とした「心の穴」を感じています。
そんな生活者を相手に、数値を伸ばし続ける経営は相性が悪いのです。

「物心ともに」の「心」の充実を経営の軸に置くと、新しい世界が拓けると思うのです。
働く人が「個性の発揮」「意思決定への参画」「仲間との協働の喜び」といった、働く喜びを満喫できれば、創造性が高まり、「欲しい物がない」と言っている生活者の心を満たすプロダクトが生まれます。
そのプロダクトを、心の充実を求める生活者が選び、つくり手(売り手)に感謝の気持ちを伝えます。
感謝を受け取ったつくり手は、もっと喜ばれたいと、顧客を思うようになる。
つくり手と顧客が、感謝を与え合う、素晴らしい関係性になるのだから、働く喜びに満ちた、素晴らしい人生になると思います。

「心の富」を定めないと、従来のエンジンで経営をすることになり、伸びしろが限定された中で、働く人も経営者も苦しむことになります。

それでも追求するならば、某中古車販売会社のように、違法行為に手を染めることにもなりかねません。

あなたは、どんな「心の豊かさ」を目指しますか?
具体的な言葉とエピソードで伝えられるようになることが大切だと思います。

それでは今日も素敵な1日をお過ごしください。


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