なぜ、あの会社は他社と同じ原材料を使っているのに価格が高いのか?

僕は、「人間性経営」という言葉が好きです。
人間への尊重が感じられるという意味でも好きですが、より現実的な、時代のニーズに合っているからです。
そのニーズとは、やむにやまれぬ現実的な課題。決してキレイゴトでは終わらない、経営の実務です。

今日の記事では、人間性経営が時代に求められている理由について考えたいと思います。

❚同じ原材料を使っても、製品にこれだけの差が出る

人間性経営は、付加価値を向上させます。
付加価値とは、日常用語としては「付け加えた価値」を意味しますが、経済学では次のように定義されています。

企業などの生産者が生産活動によって作り出した生産額から、その企業などの生産者が購入した原材料や燃料などの中間投入物を差し引いたものを表すものとされることが多い。

要するに付加価値とは「粗利益」です。

例えば、実際にA店とB店、2種類のケーキを比較してみました。

A店のケーキの売価は3000円。B店は400円高く、3300円で販売しています。
ところが、原価(原材料費)は、両店とも1000円なのです。

B店:売価(3300円)−原価(1000円)=1個あたり粗利益(2300円)

僕は、B店の社員さんに、「何が違うの?」と聞きました。
すると、「味」「見た目の良さ」「接客の良さ」「老舗」など、B店の強みが観えてきたのです。

ライバル店が使っているのと同じマテリアル(原材料)に、これらの価値を付け加えて300円高く売っているのです。

B店:原価(1000円)+付加価値(2300円)=売価(3300円)

もし、年間にケーキを10000個売ったとしたらB店は2300万円の売上総利益が出ます。A店と比較すると、実に社員さん1人分の年間人件費分の差が出るのだから凄い話です。

❚付加価値はスペックで測れるものと、感性の領域がある

今の時代、多くの製品がスペック以外の価値でも評価されるようになりました。
ケーキの例で言えば、昔は「同じ値段だったら、大きな方を買う」という人が多くいたと思います。
もしかしたら、貧しい時代では「同じ値段だったら、カロリーの高い方を買う」なんて選ばれ方をしたかもしれません。

現代人はまったく違う感性で選びます。
その選択は、マズローの欲求段階説の通りに進化していると思います。

生理的欲求(カロリー、大きさ)→社会的欲求(見栄)→自己実現欲求

世の中には、自己実現欲求に対応している製品が出始めました。

例えば、外国車。35年前はステータスシンボルとしてもてはやされた外国車が、今(といっても数年前ですが)はこんな訴求をしています。

僕は、その広告を見た瞬間に一瞬で欲しくなりました。
その広告には、車の写真が真ん中にあり、その周りに文字が書かれていました。

人生の多くを求める人へ 〜○○○(メーカー名)〜

大人の哲学をもち、子どものような純粋さを持つ人。
主流なのに、心は反主流である人。
スーツを着こなすが、ジーンズもはきこなす人。
人生も語れるが、ジョークもうまい人。
有意義も好きだが、無意味なことも好きな人。
ワインにも詳しいが、恐竜にも詳しい人。
常識は持っているが、決して縛られない人。
ITには強いが、手紙は万年筆で書く人。
家庭を愛しているが、時には家庭を忘れられる人。
孤独も好きだが、社交も上手な人。
常に冷静だが、時に情熱的になれる人。
クラシックも聴くが、ロックも愛している人。
自信はあっても、過信はしない人。
美術館にも行くが、ジムにも行く人。
協調もできるが、反論もできる人。
夜更かしはするが、朝きちんと起きる人。
守るものが多くても、冒険できる人。
部下には優しいが、上司には厳しい人。
食べるのも好きだが、料理もできる人。
上質にこだわるが、 贅沢は好きじゃない人。
自分の誕生日は忘れても、約束の時間は守る人。

これ、こういう人に乗って欲しいというメッセージなんだよね。

車というモノではなく人生を提案している。
これは単なるキャッチコピーではなく、この車は、本当にこういう人に似合うのです。

価値創造の幅が、今の時代、ものすごく抽象的、精神的なものになっています。
そして、そういう価値は(今のところ)人間によってのみ作られます。
だから、僕は、人間の創造性が活性化する愉しい企業を追求したいと願うのです。

仕事から愉しさを感じられる、幸せな働き方が企業の繁栄の源になるなんて、とても素敵なことだと思います。

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